仮に個人事業主から法人へ転向する、あるいは会社を立ち上げる場合はどんな税が発生するかを確認しておく必要があります。個人事業主と法人では発生する税項目が異なってくる点にも注意しておきたいところです。
特に「法人税」の計算は少々ややこしく、複数の条件を確認して税率を決定、計算を行う必要があります。今回は法人関係者へ向けて法人税の基本や注意点などをまとめていきます。
法人税とは何?所得税とは何が違う
法人税とは「法人が事業活動で得た所得に発生する税金」のことです。個人事業主で言う所得税に当たる税制度であり国税扱いとなっています。株式会社や有限会社といった「普通法人」に該当する法人はすべて納税を行う必要があります。
法人税は所得税に似ていますが、その計算方法は複雑になっており、個人事業主として今まで活動してきた方は仕様変更で戸惑う可能性があるので計算方法を覚えておきましょう。
法人税の現状
法人税は国内の企業競争力促進や国外企業の誘致といった目標を達成するために変更が行われています。傾向としては経済活動を促進するために少しずつ引き下げが行われているのがポイントです。
ただし変更が多いので昨年の計算が役に立たなくなる可能性があります。税率についてはいつでも最新のものを反映できるように、政府側の税制変更等の情報チェックを行っておいてください。
また買い切りの会計ソフトだと、法人税の変更等に対応できない可能性があります。そういったリスクを減らすためにはクラウドタイプの会計ソフトウェアがおすすめです。法人税が変更されてもすぐ情報が反映されますし、クレジットカードの履歴反映等もしてくれるので業務効率が上昇します。
法人税の申告はややこしいため、時間がない状態で作業をしてしまうとミスが発生するリスクが大きいです。よって事前に会計ソフトを導入するか、あるいは税理士に作業を代行してもらうかを選択して安心して申告できるようにするとよいでしょう。
納付方法は?
法人税については所得税と同じく、納税者扱いとなっている方が税金を計上して税務署へ申告する必要があります。申告および納付は定款で決定している事業年度ごとに行います。
事業年度終了後翌日から2か月以内に処理を済ませないと、延滞税が発生したりといったペナルティがあるので危険です。なるべく早めに余裕を持った申告処理を行うようにしておきましょう。
法人税の税率や税額の計算方法とは?実例を交えて解説
ここからは法人税の税率や税額の計算方法を、実例を出しながらご紹介していきます。
法人税の税率はどうなっている?
法人税の税率は、具体的に次のようになっています。
普通法人 | 資本金1億円以下 | 年800万円以下の分 | 下記以外の法人 | 15% |
適用除外事業者 | 19% | |||
年800万円を超えた分 | 23.20% | |||
上記以外の普通法人 | 23.20% |
通常は「23.20%」となっていますが、資本金1億円以下といった条件に応じて割合が減っていきます。ただし資本金が1億円以下であっても800万円を超過した所得については通常通り課税がされるので注意が必要です。
法人税の税率確認後はどうやって計算すればよい?
ここでは法人税の計算方法について解説していきます。
税率を掛ける所得はどうやって計算するの?
税率が決定した後は、いよいよ実際に納税額の計算へ移っていきます。納税額を計算するためには税率を掛ける所得を計算する必要がありますが、これは益金から損金を引いて求めるのがポイントです。
益金とは売上収入や売却収入といった法人の利益となるお金を足したものであり、損金は売上原価や販売費といった各コストを指しています。ただし益金=利益、損金=経費とならないのが注意点となります。
具体的にはたとえば中小企業の交際費が1200万円だった場合、法人税上ではすべてを損金計上することができません。年間800万円を超えてしまうと、超過分は損金ではなく課税所得とみなされてしまいます。つまり1200万円-800万円=400万円が課税所得として加算されます。社内の決算書で交際費が800万円を超えている場合は、法人税の計算時に注意する必要があるでしょう。
また減価償却費についても注意しましょう。減価償却費があまりにも大きい場合、法人税上では計上できる限度額が決まっているのですべてを損金算入できないケースが出てきます。こちらも課税所得として超過分は扱われてしまうため、計算がややこしくなります。
ちなみに経費から損金となるものを選別して実際の法人税額を計算するようなことを「税務調整」と呼ぶのもポイントです。法人税計算時はこの税務調整が必須となるので、考え方をよく覚えておきましょう。
実際の法人税額はどうなるの?
では実際の法人税額の実例を出していきます。
仮に資本金が7,000万円であり、所得金額合計が1,000万円になったとします。この場合資本金が1億円を下回るので1,000万円のうち800万円は15%の法人税率が適用され、残りの200万円は23.20%が適用されるのがポイントです。つまり法人税額は「800万円×0.15+200万円×0.232=166万4,000円」となります。
ただし法人税額を出した後も税額控除関連の制度が適用され、最終的な納税額が変更となる可能性がある点には注意しておきましょう。
たとえば外国支店での所得はその国での税法が適用されるので、日本では納税をしなくてよいです。これを「外国税額控除」と呼びます。また「研究開発税制」や「中小企業投資促進税制」といった、経済活動を促進するために税制で優遇を行う制度もあるのがポイントです。
節税を行う際は上記のような税額控除に関する制度をよく調査しておき、自社ではどの制度を適用して税額控除といった特典を受けられるのかをはっきりさせておきましょう。
経費削減のアイデア5選とやってはいけないこと|コスト削減の考え方を解説 | Re:ZONE
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法人税以外に、どんな税項目が発生するの?
ここでは法人税以外に、法人ではどんな税項目が発生するのかを解説していきます。
法人住民税
会社を登記して活動を行っている都道府県や市町村に対して納める税金のことです。
・法人税割:自治体の税率を基に法人税額×税率で決定
・均等割:自治体の税額を基に固定金額を納付
という2種類で構成されており、利益が出ていなくても均等割が発生するのがポイントです。よって必ず納付する必要があります。
法人事業税
事業者すべてに発生する税です。課税標準額(所得等)×税率で求めることが可能となっています。
業種や資本金、所得などで税率は変動します。年間所得400万円以下だと3.5%といった税率が発生しますが、税率が細かく変動するため実際に計算しないと分かりません。
特別法人事業税
法人事業税が引き下げになったことから新設された税金です。国税でありながら地方税扱いの法人事業税といっしょに申告する必要があります。
対象法人は令和元年10月1日以後の事業年度から、法人事業税に対して37%といった税率が適用され納付義務が発生します。
消費税
計算方法は特に個人事業主と変わりません。資本金額が1,000万円以上になったり、課税売上高・給与支払額が1,000万円を超過したりした場合に納税義務が発生します。
まとめ
今回は法人税の税率や計算方法といった基本をご紹介してきました。
法人税は所得税と異なり少々計算方法がややこしいです。複数の税率を掛けながら計算をしないといけない点などには注意しておきましょう。
また法人税以外の税制度も厄介です。作業負担が気になる場合は経理業務のツールによる自動化や外注等を検討してみてください。