自己資本比率は、会社の経営状況を表す1つの指標です。貸借対照表などの決算書から企業の安全性や将来性を判断する数値として扱われています。自己資本比率は高い方が良いと言われますが、業種別に目安となる数値は異なる上、各企業ごとに財務状況は変わるため、どう改善すべきか悩んでいる担当者もいるでしょう。
本記事では、自己資本比率の概要から計算方法、自己資本比率を高める方法について解説します。業種別の自己資本比率の目安についても紹介するため、自己資本比率について理解を深め、中長期的な経営改善に活かすためにぜひ参考にしてください。
自己資本比率とは貸借対照表で見る1つの指標
「自己資本比率」とは、企業の総資本のうち「純資産」の占める割合のことで、「どのくらい自己資本に依存しているか」を示します。自己資本比率が高いと、総資本の中の負債が少ないことを意味しており、自己資本比率は会社経営に関する安全性・将来性を見る指標として活用されています。
具体的な自己資本比率は、企業の財政状況をまとめた「貸借対照表(B/S)」から読み取ります。貸借対照表は基本的に流動資産・固定資産・流動負債・固定負債・純資産といった項目で構成され、以下のような図を使って表現されます。
流動資産 | 流動負債 |
固定負債 | |
固定資産 | |
純資産 | |
上記図を見ることで、企業の資産(左側の2項目)を取得するために、お金をどうやって調達したのか(右側の3項目)がわかります。
自己資本比率は、上記「負債(流動負債と固定負債)と純資産」の合計における純資産の割合を表します。右側の負債と純資産の違いは返済義務があるかどうかです。負債には買掛金や金融機関からの借り入れなどが該当し、純資本には株主からの出資や過去の利益剰余金などが含まれます。
自己資本比率は業種によって目安となる基準が異なりますが、一般的には30%以上あると企業の経営状態が安全だと言われます。
自己資本比率と自己資本利益率の関係
自己資本比率と混同されやすい言葉に「自己資本利益率(ROE:Return On Equity)」があります。自己資本利益率とは、企業が自己資本を使ってどれだけの利益を獲得したかを表す指標のことで、株主から見た投資効率を判断する際などに用いられます。自己資本比率は企業の安全性を見るのに対し、自己資本利益率は企業の収益を図る指標で両者はトレードオフの関係です。
自己資本比率が高いほど安全性は高まるものの、一方で会社が効率よく利益を出しているかを表す自己資本利益率は下がります。投資家から高い評価を得られるのは、少ない自己資本で大きな利益を得られる企業、つまり自己資本利益率の高い企業です。
自己資本比率の求め方
財務省による自己資本比率の計算方法は、2006年度までと2007年度以降で若干異なっています。それぞれの計算式は以下の通りです。
- 2006年度調査以前:自己資本比率(%)=純資産/総資本×100
- 2007年度調査以降:自己資本比率(%)=(純資産−新株予約権)総資本/×100
両式における「総資本」とは「負債+特別法上の準備金+純資産」の合計を指します。2007年度からは「新株予約権」が計算式に含まれ、純資産から新株予約権を除いた分の割合を算出する方法に変わっています。
自己資本比率の業種別目安
自己資本比率は、業種ごとに目安となる数値が異なります。中小企業庁「令和元年中小企業実態基本調査報告書(平成30年度決算実績)」による業種別の平均値(黒字企業における)を見てみましょう。
- 建設業:43.23%
- 製造業:44.65%
- 小売業:30.99%
- 卸売業:41.03%
- 情報通信業:54.25%
- 運輸業、郵便業:35.46%
- サービス業:48.34%
- 不動産業、物品貸借業:39.94%
- 宿泊業・飲食サービス業:15.21%
各業種で扱う商材の種類が異なるため、最大で約40%の違いがあります。例えば、製造業など固定資産を中心に扱う業種では20%以上が望ましいとされる一方で、商社や卸売業といった流動資産(売掛金や在庫)が固定資産よりも多い業種では、最低15%以上が目安です。
中小企業の自己資本比率
自己資本比率は、企業規模によっても当然変わってきます。経済産業省の過去の調査データによると、製造業における自己資本比率は、中小企業で24.9%、大企業で40.3%と約15%の差がありました。
また、中小企業のうち自己資本比率がマイナスを示す企業は17.4%であるのに対し、大企業では3.8%に留まっています。以上から、企業の規模によっても自己資本比率の目安は大幅に変わる可能性があることがわかります。
自己資本比率を高める方法
自己資本比率は高いほど良いとされ、「自己資本比率40%以上だと会社は潰れない」などと言われる場合もあります。逆に自己資本比率が20%未満など乏しい場合、他の経営指標もあわせて調査し、企業全体における体質改善が必要です。
ここでは、自己資本比率を高めるための具体的な対策を3つ紹介します。
自己資本比率が低い原因を分析する
まず最初に、自己資本比率が低い原因を分析することから始めます。自己資本比率は「自己資本比率=自己資本/総資本(負債+純資産)×100」で求められます。数値が低い場合、自己資本が少ないか、総資本が多いかという2つの要因が考えられます。
どの数値が悪いのか調べるために、貸借対照表(B/S)内の「負債の部」と「資本の部」の内訳をチェックします。例えば、他人資本である支払手形や買掛金、借入金が多すぎないか、自己資本の利益余剰金が少なすぎないか、などの問題を予測することが可能です。
内部留保を拡大する
分析結果に応じた1つ目の対策は、内部留保を拡大して利益を高める方法です。内部保留とは、損益計算書での税引後当期純利益を利益剰余金の一部として社内に留保する方法です。
内部保留を繰り返すことで、会社設立から今日までの蓄積された利益の合計額(利益剰余金)を増やすことができます。短期的な改善は難しいですが、長期的に見ると最も望ましい経営成果といえるでしょう。
総資産を圧縮する:不良資産・遊休資産の処分など
2つ目の対策法は、無駄を省いて総資産を圧縮する方法です。具体的には、運転資金の見直しや不良資産、遊休資産の処分といった方法があります。
総合的な資産とそれに対する負債を圧縮することで、総資産(総資本)を縮小できます。結果、自己資本比率の計算式の分母が小さくなるため、自己資本比率を高められます。
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まとめ:自己資本比率を見直して優良企業に近づこう
自己資本比率は、貸借対照表から読み取れる会社の安定性を表す指標のことです。自己資本比率が高い方が、他者からの借り入れが少なく経営面で理想的と言われますが、必ずしも倒産しない保証ではないと覚えておく必要があります。
また、企業経営においては借り入れが必ずしも悪いとは限らず、事業規模や成長段階においては自己資本だけで賄うことが難しい場面もでてきます。一定以上の自己資本比率を保ちつつ、負債と純資産のバランスを見て調整していくことが重要です。
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