有料職業紹介事業を始める前に、有料職業紹介事業の概要を把握しておきたい方もいるでしょう。無料職業紹介事業と何が異なるのかも気になるところです。
今回は有料職業紹介事業の概要をはじめ、許可を受けるための申請や費用、要件などを解説していきます。有料職業紹介事業を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
有料職業紹介事業とは?
有料職業紹介事業はどのような事業なのでしょうか? 早速、有料職業紹介事業の概要をお伝えします。
有料職業紹介事業の概要
有料職業紹介事業とは、手数料や報酬などの対価を受けて職業を紹介する事業です。
事業を実施するには、職業安定法第30条にもとづき厚生労働大臣の許可を受ける必要があります。
”有料の職業紹介事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。”
有料職業紹介事業の許可を受けると許可番号を取得できます。
許可番号は数字(2桁)+文字(ユ・ム・特・地)+数字(6桁)で構成されています。
厚生労働省職業安定局が運営する人材サービス総合サイトで番号を入力すると、有料職業紹介事業の事業者を検索可能です。
届出受理年月日や事業主氏名(事業所名称)、所在地、電話番号、手数料などの情報を確認できます。
有料職業紹介事業で紹介できない職業
有料職業紹介事業ではすべての職業を紹介できるわけではありません。
たとえば、港湾運送業務に就く職業や建設業務に就く職業は求職者に紹介できません。
”有料職業紹介事業者は、港湾運送業務に就く職業、建設業務に就く職業その他有料の職業紹介事業においてその職業のあつせんを行うことが当該職業に就く労働者の保護に支障を及ぼすおそれがあるものとして厚生労働省令で定める職業を求職者に紹介してはならない。”
有料職業紹介事業と無料職業紹介事業との違い
無料職業紹介事業は、有料職業紹介事業と違って、手数料と報酬などの対価を受けずに実施される職業を紹介する事業です。
無料職業紹介事業では、有料職業紹介で禁止されている港湾運送業務や建設業務に就く職業も取り扱えます。
有料職業紹介事業の許可を受けるためには?
有料職業紹介事業の許可を受けるために必要な申請や手数料、要件、責任者、運営中の提出資料などを解説していきます。
申請
”前項の許可を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を厚生労働大臣に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
二 法人にあつては、その役員の氏名及び住所
三 有料の職業紹介事業を行う事業所の名称及び所在地
四 第三十二条の十四の規定により選任する職業紹介責任者の氏名及び住所
五 その他厚生労働省令で定める事項”
有料職業紹介事業の許可を受けるためには、厚生労働大臣に必要事項を記載した申請書を事業計画書とともに提出します。
提出時期は事業開始予定時期のおおよそ2~3か月前までです。
厚生労働省令で定める額の手数料も納付しなければなりません。
手数料
許可申請書には、手数料の納付に関する収入印紙および領収証書を添付しなければなりません。
手数料の金額は下記の通りです。
- 5万円+1万8千円×(職業紹介事業を行う事業所の数-1)分の収入印紙
- 登録免許税9万円の納付に関する領収証書
たとえば、1か所の事業所だけで有料紹介事業を行うとすれば、手数料は下記の通り計算できます。
手数料
=5万円+9万円
=14万円
収入印紙が消印されると手数料は返還されません。
許可申請を代行してもらう場合は、さらに代行費用が発生します。
許可要件
”厚生労働大臣は、前条第一項の許可の申請が次に掲げる基準に適合していると認めるときは、同項の許可をしなければならない。
一 申請者が、当該事業を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有すること。
二 個人情報を適正に管理し、及び求人者、求職者等の秘密を守るために必要な措置が講じられていること。
三 前二号に定めるもののほか、申請者が、当該事業を適正に遂行することができる能力を有すること。”
事業を安定させられるだけの資産や、個人情報を保護できる体制、事業を適切に遂行できる能力などが求められます。
基準を満たしておらず許可がおりない場合は、厚生労働大臣から遅滞なく理由が通知されます。
責任者
有料職業紹介事業を実施するときは、職業紹介に関する業務を統括管理する職業紹介責任者を選任しなければなりません。
“有料職業紹介事業者は、職業紹介に関し次に掲げる事項を統括管理させ、及び従業者に対する職業紹介の適正な遂行に必要な教育を行わせるため、厚生労働省令で定めるところにより、第三十二条第一号、第二号及び第四号から第九号までに該当しない者(未成年者を除き、有料の職業紹介事業の管理を適正に行うに足りる能力を有する者として、厚生労働省令で定める基準に適合するものに限る。)のうちから職業紹介責任者を選任しなければならない。”
責任者が統括管理する事項は下記の通りです。
- 求人者あるいは求職者から申し出を受けた苦情の処理
- 求人者の情報や求職者の個人情報の管理
- 求人や求職の申し込みの受理
- 求人者や求職者に対する助言、指導
- 有料職業紹介事業の業務の運営や改善
- 職業安定機関との連絡調整
運営中の提出資料
有料職業紹介事業の許可を受けて運営する場合、毎年4月30日までに職業紹介事業報告書を管轄の都道府県労働局に提出しなければなりません。
職業紹介事業報告書の主な記載項目は下記の通りです。
- 許可番号
- 事業所の名称及び所在地
- 紹介予定派遣の実績の有無
- 活動状況(国内・国外)
- 収入状況
- 職業紹介の業務に従事する者の数
- 氏名又は名称
一例として国内の活動状況に関する具体的な記載項目も挙げてみます。
- 常用求人数
- 臨時求人延数
- 日雇求人延数
- 有効求職者数
- 新規求職申込件数
- 常用就職件数
- 臨時就職延数
- 日雇就職延数
ちなみに、有料職業紹介事業報告書は無料職業紹介事業報告書と同じフォーマットです。提出するときは無料職業紹介事業報告書のタイトルを線で消します。
有料職業紹介事業の許可証を受領するまでの流れ
有料職業紹介の許可証を受領するまでの流れについて、具体例として神奈川労働局のケースをご紹介します。
ステップ1:事業計画を立案する
ステップ2:神奈川労働局に相談する
※電話で相談の日時を予約します。
ステップ3:事務所等の準備をする
※定款の登記簿の目的に有料職業紹介事業を加える必要があります。
ステップ4:職業紹介責任者講習会を受講する
※申込先は、社団法人全国民営職業紹介事業協会と社団法人日本人材紹介事業協会です。
ステップ5:神奈川労働局に申込書類等を事前チェックしてもらう
※電話で申請書類の事前チェックの日時を予約します。
ステップ6:神奈川労働局に申請する
※神奈川労働局に申請で来課するときは電話で日時を予約します。
ステップ7:認可証の交付・受領
※神奈川労働局における申請内容の調査・確認、厚生労働省における審査、労働政策審議会の意見聴取などの手続きを経て許可が決定します。最短でも2か月程度の期間がかかります。
参考:有料・無料職業紹介事業許可までの流れ【需給調整事業課】(神奈川労働局)
有料職業紹介事業に関する職業紹介責任者講習とは?
有料職業紹介事業では、職業紹介責任者講習の受講が必要でした。参考として公益社団法人全国民営職業紹介事業協会が実施している職業紹介責任者講習の概要をまとめてみます。
概要
全国民営職業紹介事業協会は、昭和62年から職業紹介責任者講習会を実施しており、受講者数は22万人を超えています。
紹介業務に詳しい講師陣が実践的な講義を展開し、受講後に質問対応してくれる点が親切です。集合型講習のほかにオンライン講習にも対応しています。いずれの講習時間も9時30分~17時00分までです。
講習の手引は厚生労働省の業務運営要領に準拠しており、各種法令様式も掲載されています。受講証明書は即日に交付される流れです。
講義内容
講義内容は下記の通りです。
- 民営職業紹介事業制度の概要
- 職業安定法と関係法令
- 具体的な事業運営
- 個人情報の保護の取扱いに係る職業安定法等の遵守と公正な採用選考の推進
- 理解度確認試験
- 民営職業紹介事業の運営状況及び職業紹介責任者の職務遂行上の留意点
なお、理解度確認試験に合格できなかった場合は受講証明書が交付されません。
オンライン講習の注意点
オンライン講習ではインターネットに接続できる環境が必要です。通信制限などでビデオ通信の接続が途切れないよう、各自の責任で通信環境を整備しておきます。視聴環境が悪くて正常に視聴できなかったときは返金されません。
カメラとスピーカー、マイクの機能を搭載したパソコンも必要です。スマートフォンやタブレットの使用は禁止されています。
受講当日は顔写真と顔写真付き身分証明書を撮影する必要があります。もし撮影しない場合は受講できません。
受講料
集合型講習 | オンライン講習 | |
民紹協の会員 | 8,800円(税込) | 8,800円(税込) |
非会員(一般) | 12,500円(税込) | 12,500円(税込) |
参考:職業紹介責任者講習会とは(公益社団法人全国民営職業紹介事業協会)
有料職業紹介事業の事例3選
有料職業紹介事業がどのようなビジネスなのか、より具体的にイメージを湧かせたい方もいるでしょう。参考として有料職業紹介事業を行っている企業と、提供しているサービスの事例をご紹介していきます。
事例1.リクルートキャリアコンサルティング
リクルートキャリアコンサルティングは、国内トップクラスの人材サービスで知られるリクルートグループの就職支援会社です。
就職支援サービスの内容は、職業紹介をはじめ再就職に必要なカウンセリングや、履歴書の作成支援、教育・研修などです。
リクルートの求人ネットワークや外部機関などの情報源を駆使して、求職者にフィットする求人を提案しています。
全国47都道府県にサポートオフィスを設置しており、住んでいる場所に関わらず変わらない支援サービスを提供できるような体制になっています。
事例2.アルフアテツク
アルフアテツクは、安心・安定の長期雇用型派遣を行っている技術者向けの人材紹介会社です。
正社員希望の技術者に対して有料職業紹介を行っており、転職を有利に進められるようにサポートしています。
面談では営業担当が本人の長所やスキルをヒアリングして、企業の採用担当者にアピールしてくれます。
企業から金銭面の条件に関して事前に情報を収集しているので、勤務開始後に給与が低いことに不満を持つリスクも減らせるでしょう。
事例3.京西スタッフサービス
京西スタッフサービスは、「誠意を持って人と向き合うこと」を大切にしながら総合人材サービスを提供している企業です。東京を中心に甲信エリアや北関東エリア、神奈川エリアなどで拠点を展開しています。
有料職業紹介では、営業事務やヘルプデスク、システムエンジニア、保育士など、さまざまな職種を紹介しています。
成功報酬型の人材紹介サービスを提供しており、採用が決定するまでは費用が発生しません。採用が決まった場合、たとえば年収350万円の営業社員を紹介手数料30%で契約するケースでは、105万円の紹介手数料が発生します。
労働者が自己都合で早期退職した場合は、手数料について協議して決定するとのことです。
有料職業紹介事業はレンタルオフィスでもスタートできる
有料職業紹介事業はレンタルオフィスでもスタートできるのか、気になるところですよね。
結論として、レンタルオフィスでもスタートできます。
2017年に職業安定法が改正され、有料職業紹介事業の事務所要件が緩和されました。
【改正前の事務所要件】
・周辺に風俗業などの店舗がない
・事務所の所有あるいは賃貸の名義人と事務所の有料職業紹介事業者が同一である
・20m²以上の面積を有している
・求職者の個人的秘密を守れる構造である
・求職者が職業安定機関等の公的機関と勘違いしない
【改正後の事務所】
”現行の面積要件(おおむね 20 ㎡以上)に代えて、求職者及び求人者のプライバシーを保護するための次に掲げるいずれかの措置を講ずることとする。
(ア) 職業紹介の適正な実施に必要な構造・設備(個室の設置、パーティション等での
区分)を有すること。
(イ) 他の求職者又は求人者と同室にならずに対面の職業紹介を行うことができるよう
な措置(予約制、貸部屋の確保等)を講ずること。”
引用:「職業紹介事業の許可基準の改正」の概要について(厚生労働省)
このように、求職者のプライバシーを保護するため措置を行える環境であれば、有料職業紹介事業をスタートできます。
すでに有料職業紹介事業に対応したレンタルオフィスも登場しています。有料職業紹介事業の拠点を探している方は、ぜひレンタルオフィスも検討してみてください。
バーチャルオフィスとは?メリット・デメリットを徹底解説 | Re:ZONE
Re:ZONE
有料職業紹介事業に対応したおすすめレンタルオフィス
有料職業紹介事業に対応したレンタルオフィスの例としてRe:ZONEの概要をご紹介していきます。
Re:ZONE
Re:ZONEは、一部屋29,700円~の料金でプライベート空間を確保できるスモールレンタルオフィスです。有料職業紹介業の申請に対応したオフィスを用意しています。
完全個室のプライベート空間なので、求職者が安心して相談できます。24時間365日利用できるオフィスであり、いつでも求職者に対応しやすい環境です。
敷金・礼金・工事費・家具代・インターネット料金なども必要ありません。初期費用を可能な限りおさえながら有料職業紹介事業をスタートできます。
内装について詳しく確認したい方は、ぜひ一度内覧を予約してみてください。
まとめ
有料職業紹介事業の概要や手続き、手数料、要件などを解説しました。
有料職業紹介事業は、手数料や報酬などの対価を受けて職業を紹介する事業です。
事業をスタートするには、厚生労働大臣の許可を受けなければなりません。しかし近年は、事務所要件が緩和されたこともあり、以前よりも事業を始めやすくなっています。
レンタルオフィスを利用すれば、初期費用をおさえながら有料職業紹介事業をスタートできます。
今回紹介したレンタルオフィスもふまえて、有料職業紹介事業の拠点を探してみてはいかがでしょうか。