60代、70代のシニア起業に興味はあるものの、「何から始めればいい?」「自分にもできる?」と不安を感じていませんか。
シニア起業で成功するためには、これまでの経験を活かしつつ、市場ニーズのある分野を選ぶことが大切です。
本記事では、シニア起業のメリットやおすすめ業種、失敗しにくい始め方を3つの手順に分けて紹介します。また、企業経験を活かして起業に踏み出した実際の成功事例も取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。
シニア起業が注目される背景とは

近年、シニア世代の起業が注目されている背景には、就業率の上昇や開業者の増加といった社会的な変化があります。
総務省が実施した「労働力調査」によると、2024年における65歳以上の就業率は25.7%と過去最高を記録しました。年齢階級別では、65〜69歳53.6%、70〜74歳35.1%、75歳以上12.0%と、いずれも上昇傾向にあります。

引用元:総務省「統計からみた我が国の高齢者」,7ページ(Ⅱ 高齢者の就業 ),2025年11月14日参照
また、日本政策金融公庫が実施した「2024年度新規開業実態調査」によると、開業時の平均年齢は2000年度の41.6歳から2024年度には43.6歳に上がり、60歳以上の開業者比率も同期間に2.7%から6.3%へと約2.3倍に増加しました。
長年の経験や人脈を活かして社会と関わり続けたいという意欲や、経済的な自立志向がシニア起業の広がりを後押ししています。
シニア起業のメリット

シニア世代が起業することには、多くのメリットがあります。ここでは、その主なポイントを紹介します。
- 自由度の高い働き方ができる
定年や就業規則に縛られず、仕事内容、働く場所・時間を自由に決められます。例えばフルタイム勤務が難しい場合、ライフスタイルや体力に合わせて柔軟に働き方を調整できます。 - 長年の経験やスキルを活かせる
培った知識やスキル、長年の職業人生で築いた人脈や信用をビジネスに活かせます。元同僚や取引先とのつながりを活用し、顧客やパートナーを見つけやすい点も魅力です。 - 生きがい、社会参加の機会になる
社会とのつながりを保つことで、心に張り合いが生まれ、目標に向かって前向きに取り組む意欲を持ち続けられます。地域や業界への社会貢献は、シニア世代にとって新たな生きがいになるでしょう。
シニア起業におすすめのビジネス・業種例

シニア起業を成功させるには、自分の経験や強みを活かせるビジネスを選ぶことが欠かせません。すでに持っているスキルや知識を活用すれば、リスクを抑えつつスムーズに事業を軌道に乗せられます。
ここでは、シニア世代の起業者におすすめのビジネス・業種例を紹介します。
コンサルティング・コーチング
企業勤務時代に培った専門知識やマネジメント経験を活かし、同業界の企業や個人にアドバイスや支援を行う、シニアに人気の独立スタイルです。
長年の実務で磨いた視点と判断力は、意思決定に悩む若手経営者の支えになります。業界理解と人脈を活かせば、週に数時間のスポット支援からでも力を発揮できるでしょう。
主な取り組み例
- 中小企業や個人事業主を対象に、今後の方向性や事業計画を整理する経営相談を行う
- 管理職や若手リーダーを対象に、人材育成や組織づくりを支援する人事・人材育成コーチとして関わる
- 製造・IT・建設などの分野で、専門知識を活かして技術課題や業務改善をサポートする技術アドバイザーとして活動する
講師・教育ビジネス
講師・教育ビジネスは、これまでの経験や知識を活かして得意分野や好きなことを伝えられるため、シニア起業として始めやすいスタイルです。
最近はYouTubeやZoomなどのオンラインツールを使えば、自宅にいながら全国の受講生に教えることも可能になりました。体力に不安がある方でも、無理なく続けられます。
主な取り組み例
- 地域の公民館や生涯学習センターなどで、趣味や特技を活かした講座を開く
- オンラインで語学、音楽、絵画などを全国の受講生に教える
- 自宅や地域の学習スペースを活用し、子どもを対象に学習塾や個別指導を行う
家事・介護・育児などの生活支援サービス
生活支援サービスは、超高齢化社会や共働き家庭の増加により、家事・介護・育児など日常生活を支えるサポートの需要が高まっています。地域に根ざして信頼を築きやすく、社会貢献度も高いため、やりがいを求めるシニアの方に適した分野です。
主な取り組み例
- 高齢者宅に、地域のスーパーや商店と連携して日用品・食材を届ける
- 離れて暮らす家族に代わり、訪問・電話で安否を確認する見守りサービスを行う
- 子育て家庭を対象に、自宅または利用者宅でのベビーシッターを行う
趣味・特技を活かした商品販売
趣味や特技を活かした商品販売は、自分の「好きなこと」や「得意なこと」を形にできる、シニアの方にとって楽しく続けやすいビジネスです。
ネット販売やオンラインショップを使えば、自宅にいながら全国のお客様へ商品を届けられます。さらに、地域のマルシェやイベントに出店すれば、お客様と直接ふれあい、信頼を深めることもできるでしょう。
主な取り組み例
- 手作りアクセサリーや布小物を制作し、オンラインショップで販売する
- 自宅の畑で採れた野菜や果物を活用して、ジャムやお漬物などを商品化する
- 絵画、写真、書道などの作品を、アート販売サイトで出品・販売する
営業代行・マッチングビジネス
営業代行・マッチングビジネスは、「人と人をつなぐ」「信頼を橋渡しする」ことが得意な方に向いています。これまでに築いた人脈や信頼を活かし、企業や顧客の課題解決に貢献しながら、やりがいを感じられる仕事です。
営業経験のある方はもちろん、異業種の方でも誠実に人と向き合い相手のニーズをくみ取る力があれば活躍できるでしょう。
主な取り組み例
- 企業の商品を適切な顧客やパートナーへ紹介し、ビジネスの橋渡しを行う
- 異業種の企業や団体を結びつけ、新しいビジネスや地域の取り組みを生み出す
- 自身の営業経験や専門知識を活かして、中小企業の販路開拓をサポートする
シニア起業を始めるための3つのステップ

シニア起業を無理なく進めるためには、やるべきことの流れをあらかじめ押さえておくことが重要です。ここでは、アイデア整理から事業計画、資金計画まで、シニア世代が起業を始めるための3つのステップを解説します。
【ステップ1】アイデア出しと市場ニーズの確認を行う
まずは「どんな事業をしたいか」を明確にしましょう。得意分野や経験を活かし、長く続けられるテーマを見つけるのが大切です。やりたいことが定まれば、準備の方向性が見え、計画も立てやすくなります。
同時に、市場にニーズがあるかも確かめましょう。例えば、趣味を活かしてハンドメイド商品を販売するなら「どのくらいの人が欲しいと思うのか」「どんな競合がいるのか」を調べます。
インターネットやSNSで類似商品を検索し、販売サイトのレビューを確認すると、顧客の反応や市場の傾向を把握しやすくなります。家族や知人に意見を聞くのも身近な市場調査として有効です。
【ステップ2】事業計画書を作成する
ビジネスの方向性が固まったら、次は事業計画書を作りましょう。事業計画書は「誰に、何を、どう提供するのか」を明確にするための設計図です。
書面にまとめることで考えを整理でき、資金調達の場面でも事業内容をわかりやすく伝えられます。
以下の項目をまとめてみてください。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 事業の目的 | ・中小企業や個人事業主の経営や営業の課題を解決したい ・家事、介護、子育てなど、地域のご家庭の日常生活の負担を軽くしたい |
| 提供する商品・サービスの内容 | ・経営や営業に関する相談サービス、オンラインでの個別相談 ・家事代行や買い物代行などの生活サポートサービス |
| 対象となるお客様 | ・中小企業経営者やフリーランス、個人事業主 ・仕事と家庭を両立している共働き世帯や子育て世代 |
| 収益の仕組み | ・相談料や顧問料、オンライン面談の利用料 ・家事、生活サポートなどサービス提供ごとの利用料 |
| 販売・宣伝の方法 | ・ホームページやSNSを使った情報発信 ・既存の人脈や紹介、口コミによる広がり ・地域の公民館、商工会での告知 |
自治体の起業支援窓口では事業計画におけるテンプレートの提供や書き方の相談に応じているところもあるため、ぜひ活用してみてください。
【ステップ3】資金計画を立てて、シニア起業を支える制度・支援策を活用する
起業に必要な資金を試算し、自己資金でまかなえる部分と不足分を明確にしましょう。不足分がある場合は、融資や補助金などの制度も選択肢になります。
シニアの起業を支えるため、国や自治体では融資制度や補助金、相談窓口などが用意されています。活用できる支援策を確認し、資金面の負担を抑えながら準備を進めましょう。
創業融資制度
起業資金を確保するには、創業融資制度の活用が有効です。低利でまとまった資金を得られれば、事業を安定して始められます。
日本政策金融公庫では「新規開業・スタートアップ支援資金(シニア起業家支援枠)」を用意しており、55歳以上で要件を満たせば低金利での融資が可能です。
民間金融機関でも、政府系金融機関と提携した創業融資を扱う場合があります。
補助金・助成金
起業時には、利用できる補助金・助成金が多数あります。上手に活用することで、初期費用の負担を減らせます。
代表的な制度としては、中小企業庁の「小規模事業者持続化補助金」や「事業再構築補助金」があります。
さらに、自治体によってはシニア向けの助成制度もあり、東京都の「女性・若者・シニア創業サポート事業」は55歳以上を手厚く支援しています。
自分の事業に合う制度がないか、中小企業支援サイトや自治体の公式HPを確認してみましょう。
事業資金を調達する方法については、下記記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
関連記事:起業資金の調達方法は?コストを抑えるためのポイントも解説
シニア起業の成功事例

ここでは、企業経験を活かして第二のキャリアに踏み出した事例を紹介します。
本事例のビジネスパーソンは、大手広告代理店を早期退職後、知人の声かけをきっかけにスタートアップの新規事業を支援するコンサルティングに携わり、現在はIT企業の代表として活動しています。
広告代理店で培った企画力や調整力は、事業計画の立案や提案、プロジェクト管理などに活かされ、これまでの経験が自然に次の挑戦へとつながっていきました。
この事例から分かるように、シニア起業では「これまでの経験を次の挑戦にどう結びつけるか」を意識することが大切です。積み重ねてきた経験を丁寧に活かすことで、年齢にかかわらず、新しい働き方は十分に実現可能になります。
関連記事:セカンドキャリアは仲間とともに!成功のカギは「オフィス選び」にあり!?
まとめ:シニア起業は「準備」と「経験の活かし方」がカギ
シニア起業は、長年の経験や人脈を活かしながら、自分らしい働き方で第二の人生を築ける選択肢です。
一方で、事業計画や資金計画、公的融資・補助金の活用など、押さえておきたいポイントも多くあります。これからシニア起業を検討する方は、まずは情報収集から始めてみるとよいでしょう。
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