法人化していない個人事業主は、融資を受ける際にコツがいります。
法人成りしなくても融資を受けて資金を確保することは可能ですが、信頼性が低いといった点を踏まえて上手に融資方法を確認する必要があるでしょう。また融資以外にもお金を借りる方法があることを知っておくべきです。
今回は個人事業主が融資(あるいは融資でなくてもお金を借りられる)を受ける方法を分かりやすく解説していきます。
まずは確認!個人事業主が融資を受ける条件とは?
個人事業主が融資を受ける条件は法律で決まっているわけではありません。ただし以下のポイントを押さえておくと融資審査を通せる可能性が上がります。
開業届提出を行っている
個人事業主として開業届の提出は重要です。開業届を出していないと個人事業主として働けないわけではなく、面倒ならば出さないまま事業を行うことは可能です。ただし開業届を行うと
- 屋号を付けた口座を開設可能である
- 小規模企業向けの共済へ加入可能
- 補助金や助成金申請ができるようになる
といったメリットがあるため、実質的に独立や起業前後で開業届を提出するのは必須と言ってよいでしょう。
確定申告をきっちり行っている
個人事業主として働いている方は、確定申告を行って税金を納める義務があります。そして確定申告をきっちり行ったほうが、融資を受けられる確率も上がるでしょう。
融資においては
- 借しても将来的にお金が返ってくるか
- 貸すだけの信頼性を確保できるか
といった点が重要視されています。
融資を行う目的は
- お金を貸すことでリターンを得るため
- 将来的に成長するであろう企業や事業主へ投資するため
といった点にあるからです。ビジネスライクに考えて「この人にはお金を貸すだけの価値がある」と認められないと、融資を受けられる可能性が低下していきます。
ですから「確定申告を行った上で黒字経営、納税完了がとどこおりなく確認できる状態であるか」もポイントになってきます。融資を受ける際は確定申告を行っていることを明示できる関連書類の用意が必要です。余裕を持って準備しておき、借り入れ先へ提出できるようにしておきましょう。
資金を調達できるだけの状態である
- 今は赤字でも需要が将来的に急増する市場で勝負している
- 今まで戦略的投資を行ったことで赤字計上をしている
- 融資は初めてだが今まで健全な黒字経営を行っている
といった状態だと融資を受けやすいでしょう。
資金を調達できるだけの納得行く理由があれば融資先もお金を貸しやすくなります。
一方
- 事業が常に赤字である
- 黒字でもプライベート資金から常に借りている状態
- 一見黒字でも手元に資金がなさそう
といった認識を持たれると融資が受けられなくなる恐れがあるため注意してみてください。
融資の選び方とは?融資のように使えるサービスも検討してみよう
個人事業主が融資を検討する際は、次の点にも注意してみましょう。
個人事業主への資金提供へ対応しているか確認
融資サービスによっては、個人事業主への資金提供を行わない可能性が高いサービスもあります。企業と比較して信頼性の低いことが多い個人事業主としては、まず立場がなくても資金を提供してくれるか確認する必要があります。
- 事業が成長していて貸すとリターンが見込める
- 戦略的投資のための借り入れである
と認められれば、それだけ融資が受けられる可能性も上がっていくでしょう。
個人事業主にも資金を提供していると記載されていない場合は、直接問い合わせて自分の環境を伝えて、借りられるかどうか確認したほうが安心です。
審査の厳しさや金利などを比較する
たとえば日本政策金融公庫であれば審査が厳しい分金利が低い、信用金庫であれば金利が高くなるものの融資が受けやすいといった特徴があります。
審査の厳しさが低くて、金利も低いサービスだと安心できるでしょう。ただし借入先の信頼性も考える必要があります。
- 審査のハードルと金利のバランスが取れている
- 政府公認機関といったお墨付きがある
といった点を確認してから借入先を選定できると安心です。
融資以外にもお金を工面できる方法があると理解する
現在お金を借りる方法は融資だけにとどまりません。
- ちょっとしたお金を借りられるキャッシュレス決済系のサービス
- クラウドファンディング
なども融資と同じような資金提供が受けられるサービスとして注目されています。もちろんメリットもデメリットもあるので最適な借り入れ方法ではない可能性があるでしょう。
- どのくらいの金額お金を借り入れたいのか
- 商品開発の資金工面や事業全体の投資強化など何を目的にしているか
などで最適な借り入れ方法は変わってきます。
個人事業主が融資(資金提供)を受ける方法!メリット・デメリットも解説
ここからは融資だけに限らない、資金提供を受ける方法を解説していきます。
日本政策金融公庫から借りる
政府が出資している金融機関が日本政策金融公庫です。個人事業主もターゲットに融資を行っているので選びやすいのが特徴であり、政府関連機関のため信頼性が高いのもメリットになります。
返済しやすいように金利が低いのもメリットであり、返済期間は5年以上、といったように長めに設定可能です。審査にさえ通ればゆっくり返済できるので慌てずにお金を借りることができるでしょう。
その代わり政府関連機関なので、審査が厳しくなってしまうのがデメリットです。また融資提供が開始するのに時間が掛かる点もネックになっています。
信用金庫から借りる
地域に根差した金融機関が信用金庫です。信用金庫は個人事業主を相手に資金提供するケースもあるので、借入先として安心できる機関となっています。地域発展に関係する事業を行っている場合は、信用金庫の理念と一致するために融資が受けられる可能性が高まります。
ただし日本政策金融公庫から借りる際よりも、金利が増えてしまう点がデメリットです。金利を低くしたい方は日本政策金融公庫とどちらがよいか確認してみましょう。
銀行から借りる
融資先としてまず思い浮かぶであろう銀行からは、企業専門に融資している場合資金を提供してもらえない可能性があります。ただし地銀のようなメガバンクでない金融機関であれば、中小企業との取引実績も豊富なので融資を受けられる可能性が上がるでしょう。
銀行から融資を受けると、まず金利が小さく返済しやすいのがメリットになります。また長期的に付き合いができると継続的に同じ機関から融資を受けられるのもポイントです。
ただし審査が厳しく、担保を求められる場合もあるので融資条件を厳しく確認する必要があります。ケースによっては審査期間が長く、すぐ資金を集められないケースもあるので注意してみましょう。
地方自治体から借りる
日本政府レベルではなく地方自治体レベルに範囲を縮小するのも有効です。地方自治体では独自の融資制度を設けている場合があり、指定の地域に住んでいれば融資を受けられるからです。信頼性が高いのもポイントになってきます。
その代わり地方自治体ごとに制度が違うので、自分がどの自治体のサービスを受けられるのか詳細を確認する手間が掛かるでしょう。
補助金や助成金を使う
企業向けに提供されている補助金や助成金については、個人事業主であっても借りられるケースがあるためチェックしておく必要があります。融資制度とは異なり返済義務がない点が最大のメリットとなるでしょう。
ただし補助金は経済産業省など、助成金は厚生労働省が監督している点にまず注意してみてください。そして審査は補助金のほうが厳しくなる点、資金提供のタイミングは対象事業を行ってから書類を提出した後だという点も理解しておきましょう。事業に必要になった資金は自分で確保する必要があります。その後キャッシュバックを受けられるイメージです。
キャッシュレス決済のローン制度を使う
最近登場した方法なので認知していない方もいらっしゃるかもしれませんが、キャッシュレス決済のローン制度も資金確保の方法として考えられます。
キャッシュレス決済のローン制度が役立つのは、ちょっとした買い物のときです。たとえば「この消耗品を2,000円で買いたいけど、500円くらいその場で足りなかった」といったときに使えます。先払いでお買い物を済ませた後、クレジットカードのように返済できるのがメリットです。また少額ローンと呼ばれるように、ちょっとした借り入れに使えるメリットもあります。
ただし大規模な事業投資のような攻めの融資には向かないかもしれません。資金の補填役として、ちょっとした用途に使うのはよいでしょう。
クラウドファンディングで資金を集める
クラウドファンディングが使えるのは、「新規で目新しい商品・サービスを提供するとき」です。
たとえば「VRのにおいと現実世界のにおいをリンクできる商品を販売したい」という場合は、資金をクラウドファンディングで集めてファンを醸成できます。単に資金を集めるだけでなく、将来的にユーザーになってくれる熱意のある顧客を前もって確保できるのがメリットです。
ただし
- 資金提供の見返りを用意する必要がある
- 目標金額を達成できない可能性がある
- 商品やサービスとして提示できないあいまいな構想実現には使えない
といったデメリットもあります。
まとめ
今回は個人事業主が融資を受ける方法をご紹介してきました。
融資に限らずさまざまな方法で資金を確保することで、資金の補填や攻めの投資などに使うことができます。個人事業主でもさまざまな方法が利用できるので、信頼性を確保するコツなどを覚えれば簡単に融資を引き出すこともできるでしょう。
ただし赤字経営といった場面では融資を利用できない可能性があるので、事業を安定させておく努力は怠らないようにしてみてください。