「松江司法事務所」代表。和歌山県出身。東京大学経済学部中退。司法書士資格を取得後、大手司法書士法人と個人事務所で計10年の経験を積む。 親の体調を機に故郷・和歌山へ戻り、独立開業。現在は、不動産売買に伴う登記と相続手続きを軸に、今後は成年後見や家族信託など、高齢者とその家族を支える分野への展開も見据える。駅前のレンタルオフィス「Re:ZONE Key Site」を拠点に、人とのつながりを生かしながら、地域に根ざした事務所づくりを進めている。
インタビュー拠点:Re:ZONE Key Site
温めてきた独立への思いを、故郷で形に
東京で培った実務経験を胸に、地元・和歌山で開業するまでの歩み
——まずは、これまでのご経歴を簡単にお聞かせください。
私は和歌山の出身で、大学進学を機に東京に移り住みました。
大学では経済学部に進んだのですが、学びを進めるうちに、法律の分野へ興味を持つようになりました。
改めて進路を見つめ直すなかで出会ったのが、司法書士という仕事です。そこから腰を据えて勉強を重ね、資格を取得しました。
——資格を取られてからは、そのまま東京で就職されたのですか。
はい、東京で就職しました。大手の司法書士法人と個人事務所で、あわせて約10年の経験を積んでいます。
勤務中に結婚もしまして、妻には以前から「いつか独立する」と話していました。
独立の思いを温めていた折、ちょうど親の体調が気がかりな時期を迎え、この機に故郷の和歌山へ戻って開業しようと決めました。
中心は相続と不動産登記。今後は成年後見・家族信託なども視野に
——現在は、どのようなお仕事を中心に手がけていらっしゃいますか。
不動産の売買に伴う登記と、亡くなられた方の土地の名義をお子さんへ変えるといった相続の手続きが中心です。
今後はこれらに加えて、成年後見や家族信託といった、ご高齢の方やそのご家族を支える分野にも、取り組んでいきたいと考えています。
高齢化が進む和歌山では、ご本人やご家族を早い段階から支える仕組みが、これからますます必要になるはずです。
——和歌山で開業されて約1年が経ちます。当初のイメージと違った点はありますか。
やはり相続のご依頼が多いのですが、不動産の取引も想像以上に動いています。
和歌山は大阪ほど不動産価格が高くないこともあり、大阪にお住まいの方が投資用として和歌山の物件を購入し、賃貸に出されるケースがあります。
もちろん、マイホームとして購入される方もいらっしゃいます。
売買に伴う登記に携わるなかで、地元の方にも、外から来られる方にも、この土地が選ばれているのだと感じています。

「わかりやすく伝える」。年配の依頼者に信頼される仕事の流儀
依頼者の多くはご高齢の方。「伝わる形で説明する丁寧さ」と「最新の法改正を追う姿勢」が信頼をつくる
——ホームページを拝見すると、専門的な内容も口頭だけで済ませず、書面にしてお渡しするなど、わかりやすく伝える工夫をされている印象を受けました。その背景には、どのような考えがあるのでしょうか。
私の仕事は、ご高齢の方とのやり取りが多いことが特徴です。
例えば亡くなられた方が90代であれば、相続人の方も60歳を超えていらっしゃいます。
一度の説明ですべてを覚えていただくのは難しいですし、ご家族と相談してから決めたいという方も多くいらっしゃいます。
ですから、なるべく伝わりやすい形でご説明することを日頃から心がけています。
変わり続ける法制度。「自分で取りに行く」姿勢を欠かさない
——司法書士のお仕事は、法改正の影響を受ける場面も多いのでしょうか。
司法書士の仕事は、書類を作成して役所に提出するといった手続き業務が中心です。
ここ10年ほどは関連する法改正が相次いでいまして、これまで不要だった書類の提出を求められる場面も実際に出てきています。
最新の改正内容を確実にキャッチアップしているからこそ、お客様との書類のやり取りを滞りなく進められるのだと考えています。
——法改正のキャッチアップや情報収集は、個人で動かれているとなかなか難しい印象があります。どのような工夫をされていますか。
情報のアンテナとして役立っているのは、SNSです。
司法書士の業界にも、XやFacebookで情報発信をされている専門家の先生方がいらっしゃいます。法改正があったとき、あるいは「こういう事例が、こういう展開になった」という実務の最前線の情報を、発信してくださっています。
そうした先生方をフォローして、日々目を通すようにしています。もちろん、実際の手続きにあたっては、法務局の通知など公式の情報で必ず確認します。
司法書士は個人事務所が多いので、一人ひとりが自分で情報を取りに行く姿勢が、やはり欠かせないと思っています。

友人の一言で知った、「人が集まる場所」
1Fにカフェ、2・3Fにコワーキングスペース。顔と顔をつなぐレンタルオフィス「Re:ZONE Key Site」が、開業の拠点になった
——開業の拠点としてレンタルオフィス「Re:ZONE Key Site」を選ばれた経緯を教えてください。
和歌山には、事務所として借りられる物件がもともと多くありませんでした。そのような中で、「Re:ZONE Key Site」を知ったのは、Key Siteの運営会社の一つである紀陽銀行に勤める友人が、オープンに合わせて教えてくれたことがきっかけです。
レンタルオフィスは5Fにありますが、1Fにカフェ、2・3Fにコワーキングスペースがあると聞き、自然と人が集まる場所なのだろうと想像できました。その点に魅力を感じたのです。
司法書士の仕事は事務作業が中心で、極端に言えば、お客様と直接お会いしなくても電話などで済んでしまう業務もあります。だからこそ、なるべく外に出て、まったく違う業種の方とお会いしたいと思っていました。このオフィスなら、自然とそういう出会いが生まれると考えました。
——実際に使ってみて、良かった点はありますか。
想像していたとおり、やはり人の行き来が多いことですね。
イベントも開かれますし、1Fには銀行のATMがありますので、用事で立ち寄られた知人と、思いがけず顔を合わせることもあります。
また、これから会社をつくろう、事業を始めようという方々と接する機会は、私自身にとって良い刺激になりますし、実際に会社を設立されるとなれば、設立登記という形で私の仕事にもつながっていきます。
人とのご縁が仕事に、仕事がまたご縁に。そんな循環が、この場所では自然と生まれています。
起業家が集う駅前のレンタルオフィス。相談内容に応じて個室の会議室も活用
——東京とは、事務所周りの雰囲気もだいぶ違うと思います。この施設や街の特徴は、どう感じていますか。
もともと紀陽銀行の店舗だったビルということもあり、場所をお伝えすると皆さん「ああ、あそこね」とわかってくださいます。
駅から近いのもありがたいところですね。近隣から電車で来られる方はもちろん、東京からお越しになる方をお迎えすることもあります。和歌山は車社会ですが、それでも駅に近いことには大きな意味があると感じています。
——レンタルオフィス「Re:ZONE Key Site」と、和歌山の地域経済との関係性は感じますか。
「和歌山で起業家を育てていきたい」というコンセプトで運営されている場所だと受け止めています。
実際に、新しく事業を始めたい方が集まり、起業家向けのイベントも数多く開かれています。これから盛り上がっていく空気を感じる場所です。
——相続などでは、ご家族には聞かせにくいお話もあると思います。お客様との打ち合わせでは、どのような配慮をされていますか。
相続のご相談では、どのような財産をお持ちなのかを詳しく伺います。
例えば、お子さんが複数いらっしゃる場合には、「こちらに少し多く残したい」といったご希望を打ち明けられることもあります。こうしたお話は、他の方の耳に入ってよい内容ではありません。
ですので、打ち合わせの際は3Fの個室会議室を予約し、プライバシーの確保には細心の注意を払っています。
ご高齢の方など、こちらから伺ったほうがご負担の少ない場合は私が出向きますが、「あそこならすぐ行けるよ」とオフィスまで足を運んでくださる方も多いですね。

目指すのは、個人のお客様から直接選ばれる事務所
地域に根ざした事務所を、故郷・和歌山で。これから開業する士業の方へ伝えたいメッセージ
——今後の展望を教えてください。
司法書士の仕事は、不動産会社や、税理士をはじめとする他士業の方からのご紹介でご依頼いただくことが多く、日頃のつながりはこれからも大切にしていきたいと思っています。
加えて、売買も相続も、個人のお客様に事務所を知っていただき、直接ご相談いただける入り口をつくっていきたいと考えています。
目指しているのは、東京で最後にお世話になった事務所のような形です。5〜6人ほどの規模で、地域に密着して活動しているチームでした。
今も折に触れて伺い、一緒に仕事をさせていただいています。東京との縁を保ちながら、和歌山でも地域に根ざした事務所をつくっていきたいですね。
——最後に、和歌山で士業の開業や物件探しに悩んでいる方へ、先輩として一言メッセージをお願いします。
「Re:ZONE Key Site」には、士業として開業するのに十分な設備がそろっています。2・3Fでゆったり休憩したり、1Fのカフェでお茶をしたりと、気分転換もできる場所です。
仕事も人とのつながりも、一カ所でかなう環境ですから、和歌山で新しく開業される方には、ぜひおすすめしたいですね。

