フリーランスに開業届は必要?
個人で事業を始めたときは、開業届を出さなければなりません。事務所や店舗を構えていないフリーランスだとしても届け出は必要ですし、事業所得を得ている場合も同様です。
また会社員が副業として、給与所得とは別に継続して収入を得る場合も、開業届を提出しなければなりません。
開業届は、事業開始から1ヶ月以内に提出することが、所得税法により定められています。しかし、出さなくても罰則や罰金はありません。
そのため、事業所得を出さずにフリーランスとして活動している人もいます。しかし、これは明らかに法律違反となります。開業届の提出は、義務であることを理解しておきましょう。
なお、収入を得たとしても、それが一時的なものであれば開業届を出す必要はありません。
フリーランスが開業届を出すメリット・デメリット
ここでは、フリーランスが開業届を出すメリットとデメリットについて紹介します。
フリーランスが開業届を出すメリット
開業届の提出には、さまざまなメリットがあります。主に、次の6つのメリットが挙げられます。
1. 青色申告ができる
フリーランスが開業届を提出する最大のメリットといっても良いでしょう。青色申告で確定申告をすると、最大で控除金額65万円の特別控除を受けられます。
また後述するメリットには、青色申告をすることにより得られるものも少なくありません。
青色申告をするためには、開業届に加えて所轄税務署への「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要です。所得税の青色申告承認申請書は開業の2ヶ月以内に提出します。
2. 社会的に信用される
開業届には、事業内容や事業を行う場所、屋号などを記載します。開業届が受理されることによって、フリーランスとしての事業が認められたことになります。
金融機関における屋号名義の口座開設や融資、持続化給付金などの給付金の受け取り、小規模共済への加入時などは、開業届の控えが必要となる場合があります。
言い換えれば、開業届の提出により、ビジネスを行ううえでの社会的信用が得られるのです。
3. 屋号で口座が作れる
開業届への屋号の記載は任意です。ただし、屋号を記載しておけば、屋号付きの銀行口座を開設できます。
例えば、お客様から支払いを振り込んでもらうときなど、個人名義の銀行口座では信頼性が低くなってしまいます。
また屋号付きの銀行口座を新しく開設することで、プライベートの口座と区別ができ、仕分け作業が楽になります。尚且、税務調査が入った場合、プライベートのお金の流れを見られずに済みます。
4. 家族への給与は経費計上できる
生計を一にしている家族が仕事を手伝っている場合、その家族は青色申告専従者となり、給与をすべて経費として所得から控除できます。
所得控除をするためには、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要です。「所得税の青色申告承認申請書」と一緒に出しておきましょう。
5.赤字の繰り越しが可能
事業所得が赤字となった場合、その年の給与所得や不動産所得による所得と相殺できます。それでも赤字であれば、その年の所得税は支払う必要がありません。
青色申告をすると、この赤字を3年間繰り越すことができ、翌年以降の所得と損失を相殺することが可能です。また前年に青色申告をしている場合は赤字を繰り戻せるので、前年支払った所得に対する税金が還付されます。
6. 小規模企業共済に加入できる
小規模企業共済は、小規模企業の経営者や役員が、廃業後や退職後の生活資金のために積み立てることができる制度です。掛金は全額所得控除されるほか、事業資金の借り入れもできます。
フリーランスが開業届を出すデメリット
開業届を出すことにはデメリットもあります。ここでは2つご紹介します。
1. 帳簿を付ける必要がある
事業所得を得るのであればすべての取引を帳簿に付けて、7年間は保管しておかなければなりません。
慣れないうちは難しく感じるかもしれませんが、今は簡単に仕分けや青色申告書類を作成できるサービスも提供されています。また、ある程度の売上を確保できるようになれば、税理士などに頼むのも良いでしょう。
2. 失業保険が貰えなくなる
会社員やアルバイトの仕事をやめて、失業保険(雇用保険の失業給付)を貰っていた人は、開業届を出すことにより資格を喪失します。
そもそも失業保険は、次の仕事を探しているけれど職が決まらない人に支給される給付金です。個人事業を開始した際、ハローワークに申告をせずに失業保険をもらうと不正受給になります。
フリーランスの開業届の提出方法
フリーランスの開業届の提出方法について、提出時期と書き方について確認しておきましょう。
開業届を出すタイミング
開業届は、事業を開始した日から1ヶ月以内に提出します。ただし、「事業を開始した日」をいつにするかの明確な定義はありません。
店舗があればオープン日、許認可が必要な事業であれば、許認可を受けた日を開業日とすることが一般的です。
開業届の書き方
開業届は正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。記入するための書類は、税務署の窓口や国税庁のサイトから入手できます。
具体的な記入事項は次のとおりです。
1. 提出先・提出日
提出先として納税地を所轄する税務署名と提出日を記入します。
2. 納税地・住所
「住所地」「居住地」「事業所等」から納税地を選び、住所を記入します。住所地と自宅の場所を示す住民票のある土地です。居住地は一時的に住んでいる場所、事業所等は店舗や事務所がある土地です。
一般的に、納税地は住所地を届け出ます。
3. 氏名・生年月日・個人番号
事業者の氏名と生年月日を記入して、押印します。またマイナンバーカードまたは通知カードに記載されている12桁の個人番号も記入します。
4. 職業・屋号
事業の内容(職業)と屋号を記入します。職業名には特別な決まりはありませんが、ウェブデザイナー、ウェブサイト運営、喫茶店など具体的にわかる名前を書きましょう。
屋号については、基本的に任意となっています。
5. 届出の区分・所得の種類
新規開業の場合は「開業」を選びます。不動産所得、山林による所得でなければ、所得の種類は「事業所得」となります。
6. 事務所等を新設した日
自分で設定した開業日を記入します。
7. 開業に伴う届出書の提出の有無
「所得税の青色申告承認申請書」や「青色事業専従者給与に関する届出書」を一緒に提出する場合は「有」を選択します。
8. 事業の概要
職業欄に記載した職業の事業内容を簡潔に書きます。例えば、ウェブデザイナーであれば「ウェブデザインの制作」で構いません。
9. 給与等の支払の状況
人を雇っている場合、人数を記載します。青色事業専従者は「専従者」欄に、それ以外の従業員は「使用人」欄に書きましょう。
「税額の有無」は、源泉徴収が必要かどうかで決まります。基本的に雇用していれば源泉徴収が必要となるため「有」を選択しますが、全員の毎月の給与が8万8,000円未満で扶養控除等申告書を提出している場合は「無」を選びます。
開業届の提出方法
開業届に必要事項を記入したら、「所轄の税務署名を記入する」の欄に記入した税務署に提出します。税務署の所在地は、国税庁のサイトで確認できます。
自宅と、事務所や店舗を管轄する税務署が異なる場合は、それぞれの税務署に提出する必要があります。
屋号の口座を開設する際などに控えが必要になるため、控えにも受付印を貰い保管しておきましょう。
まとめ
フリーランスが事業を開始する際は、開業届を提出しなければなりません。帳簿付けの手間はかかりますが、青色申告による税金の控除や、屋号付き銀行口座の開設などのメリットを享受できます。
また、開業届は事業を開始してから1ヶ月以内に管轄の税務署に提出しましょう。
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