健全な企業経営や組織の体制管理に欠かせないのが、「ガバナンス」です。インターネットの浸透やSNSの普及により、企業の不正に対する世間の目はますます厳しくなっている現在、各企業においてガバナンスの強化がより一層求められています。
本記事では、ガバナンスの定義や似た用語との違いといった基本知識から、ガバナンスが求められる理由、強化する方法などをわかりやすく解説します。適切な経営管理の考え方を理解し、ガバナンスを事業運営に役立てるためにご覧ください。
ガバナンスとは何か?基本的な意味と定義
ガバナンス(governance)とは、日本語で「統治」「統制」といった意味を持つ言葉です。企業や組織に関しては、「持続可能な成長と社会的責任を果たすための体制や仕組み」を指します。
ガバナンスは、企業の不祥事や情報漏えいなど、幅広い経営リスクを未然に防止するために有用です。また、株主や出資者など企業の利害関係者と信頼関係を築くためにも重要な取り組みです。
ガバナンスとコンプライアンス・内部統制・リスクマネジメントの違い
ガバナンスと似た言葉に、「コンプライアンス」「リスクマネジメント」「内部監査」があります。これらの用語の意味についてまとめた以下表をご覧ください。
用語 | 意味 |
ガバナンス | 健全な経営判断・運営のために監視・統制する体制 |
コンプライアンス | 企業活動における法令順守の姿勢 |
内部監査 | 組織内部の人間が、企業の不正防止や業務効率化のために行う監査 |
リスクマネジメント | 経営リスクを事前に想定し、対策を構築しておくプロセス |
コンプライアンス(compliance)は、法令だけでなく、業務規定やハラスメント防止などの社内規範、企業倫理などを遵守することを指します。ガバナンスの強化は、コンプライアンスの確立と整備につながります。
また、内部監査が組織の中で独立して機能することで、ガバナンス体制を構築し、プロセスの有効性をコントロールすることが可能になります。
社会情勢が急速に変動している現代において、健全かつ安定的な企業経営を目指す上で、リスクマネジメントのプロセスを適切に構築し、機能させることが必要です。リスクマネジメントは、ガバナンスの重要な機能の1つと言えます。
上場企業のガイドライン「コーポレートガバナンス・コード」とは
コーポレートガバナンス・コードとは、「企業がガバナンス体制を構築するために守るべき原則・指針」です。
コーポレートガバナンスとは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえたうえで、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する。
引用元:コーポレートガバナンス・コード|株式会社東京証券取引所
上場企業における不祥事の未然防止と、国際的な競争力の強化を目的とし、金融庁と東京証券取引所が主導で2015年に作成されました。上場企業は、コーポレートガバナンス報告書を定期的に提出し、ガバナンス体制の現状を公開することが義務付けられています。
ガバナンスを機能させるメリット
組織の体制を整え、ガバナンスを機能させることによってさまざまなメリットが期待できます。
企業の不正を未然に防げる
組織内の管理・監視体制を構築し、適切に機能させることで、不正行為や不祥事を未然に防ぐことができます。企業の不正は、顧客や株主、社員など多くの関係者に多大な損失を与える可能性があります。
ガバナンスの強化により、透明性のある業務プロセスや組織運営の実現と定着に役立つでしょう。具体的には、内部通報制度の導入やITツールの導入といった対策があります。
資金調達や財務管理で有利になる
ガバナンスは、企業の財務面においてもメリットが期待できます。企業の成長には、中長期的な戦略が不可欠であり、各ステージで融資や出資が必要です。
金融機関では、ガバナンス体制に則った情報開示を行う企業は信頼性が高いと判断されるため、融資や出資の審査で有利になる可能性があります。また、財務状況がクリアであれば、取引が円滑に進みやすくなるでしょう。
競争力の強化につながる
ガバナンスが効いていれば、健全な経営体制が整うため、利益が安定しやすくなります。また、外部からの社会的信頼性も高まるため、客観的な評価がアップします。
加えて、社員の離職率の低下や人材確保などにより、競争力の向上にもつながるでしょう。企業の持続的かつ中長期的な企業成長と、国際市場における競争力の強化が期待できます。
ガバナンスが効かない場合に考えられるリスク
ガバナンスが整備されていない場合、企業にとってどのようなデメリットが考えられるのでしょうか。
社会的信用を失うリスクが高まる
ガバナンスが機能していない企業では、組織内での監視や管理が行き渡らず、不正や不祥事が発生するリスクが高まります。不祥事が一旦発生すると、社会的信用を失ってしまい、経営や事業運営への影響は免れられません。
また、経営や業務プロセスが適切に管理されず、コスト増大や利益の減少などを引き起こす可能性も考えられます。
グローバル化への対応が遅れる
経済のグローバル化が進む中、国際市場において競争を勝ち抜くためにはガバナンスの強化は必須です。組織の統制が取れていない場合、企業経営の健全性や透明性を確保することが難しくなり、変化スピードの早い市場に対応できなくなる可能性もあります。
特に海外への市場拡大や事業展開を視野に入れている企業では、経営悪化のリスクを回避するためにガバナンスの整備が必要です。
ガバナンスを強化する5つの方法
企業がガバナンスを強化するためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。ここでは、以下5つの対策を強化するために効果的な施策をご紹介します。
- 内部統制を強化する
- 客観的な監視体制を構築する
- コーポレートガバナンスを社内へ周知する
- コンプライアンスを徹底する
- リスクマネジメントを実施する
ガバナンスの強化には、内部統制の構築と整備が不可欠です。具体的には、社外取締役や監査役を設置することで、第三者の視点から経営を監督でき、経営陣の不正や不祥事の防止につながります。
また、社内で順守すべきルールが適切に機能するために、マニュアルや研修などを利用して社員に周知することも大切です。加えて、コンプライアンスやリスクマネジメントを徹底する体制づくりに取り組みましょう。
ガバナンスの重要性を確認して必要な施策を行おう
ガバナンスは、企業が健全に経営を続けるために必要な統治・統制の仕組みです。企業がガバナンス体制を強化することで、社内の不正や不祥事を未然に防ぎ、社会的な信頼性を確保できます。また、資金調達で有利になる上、グローバル化する市場における競争力の向上にも役立ちます。
反対に、ガバナンスが整っていない場合、企業の社会的信用の損失やグローバル化への対応の遅れといったリスクが考えられます。ガバナンス強化に向けた施策は、内部統制や監査体制の構築、社員への教育と周知、コンプライアンスやリスクマネジメントなどがあり、企業規模や状況に合わせて取り組む必要があります。
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