社会福祉法人とは、社会生活を送る上でハンデとなるような人へ公的なサポートを提供するための法人格です。自然災害や国際情勢の変化を受けて、さまざまなシーンで社会福祉の必要性が見直されている現在、社会福祉法人の活動にも注目が集まっています。
本記事では、社会福祉法人の事業内容や制度、メリット・デメリット、設立するために満たすべき要件などについて解説します。社会福祉法人について知り、法人設立を検討するためにぜひお役立てください。
社会福祉法人とは?
社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的とした非営利団体です。社会福祉法では「社会福祉事業を確実に効果的かつ公正に行うための公益性の高い法人」であると定義されています。
法律にある「社会福祉事業」とは、社会福祉法第2条に定められている第一種社会福祉事業及び第二種社会福祉事業のことです。第一種社会福祉事業は、国や地方公共団体、社会福祉法人のみが運営できます。
民間が担える第二種社会福祉事業には、子どもの一時預かり事業やデイサービス、障害者相談支援といった、高齢者や障がいのある人、子供、自然災害に被災した人などを支援する事業が含まれます。
なお、社会福祉法人は非営利法人ですが、社会福祉事業とは別に公益事業や収益事業を行うことが可能です。
社会福祉法人制度とは
社会福祉法人制度は、1951年(昭和26年)、当時の社会福祉事業法(現社会福祉法)として創設されました。2016年(平成28年)の社会福祉法改正によって、経営組織のガバナンスの強化、事業運営の透明性の向上等の社会福祉法人制度改革が行われています。
社会福祉法人と一般的な株式会社との違い
社会福祉法人と株式会社の主な違いは、以下の点です。
- 利益の追求
- 事業の目的
- 設立要件
前提として、社会福祉法人は利益追求型の企業形態ではないため、社会福祉事業を通じて得た収入は原則として社会福祉事業のみにあてられます。一方、一般的な株式会社などの企業は営利法人であり、事業活動による利益を追求できます。
また、社会福祉法人が行う事業は、地域に貢献した事業の継続など設立要件や運営などが決まっていますが、一般企業は事業の目的に制約はありません。さらに、社会福祉法人と株式会社とでは、設立要件が大きく異なり、社会福祉法人では最低定員数などが細かく定められています。
事業内容によっては、一般的な株式会社の設立を検討してみるのも1つの選択肢でしょう。
社会福祉法人のメリット
社会福祉法人を設立する上でさまざまなメリットが期待できます。主な項目は以下の3つです。
- 利用できる助成金や補助金が多い
- 税制の優遇が受けられる
- 社会的な信頼性が高まる
社会福祉法人を対象とした公的な助成金や補助金が多く用意されています。厚生労働省の「社会福祉施設整備補助金」では、社会福祉法人が施設を整備する場合、原則として整備費の1/2、都道府県も施設設置者に対して整備費の1/4を補助します。
民間の団体で助成募集を実施しているところも多く、児童福祉施設や障害者施設などの設立に利用できます。
また、社会福祉法人は、基本的に法人税や固定資産税、登録免許税などの税制優遇措置を受けることが可能です。収益事業を行った場合も、生じた法人税の税率が優遇されます。
加えて、社会福祉法人として継続的に活動するためには、外部監査や書類の審査など厳しい要件を定期的にクリアする必要があります。そのため、実績により社会的な信頼性を得ることにもつながります。
社会福祉法人のデメリット
一方、社会福祉法人を設立するデメリットとしては、以下の点が考えられます。
- 設立の手続きが難しく、要件がある
- 資金繰りを工夫する必要がある
- 指導や監査が入る分、運営が複雑化しやすい
社会福祉法人の設立は、一般的な法人設立に比べて手続きが複雑で難しい傾向にあります。所轄庁の認可を受ける必要がある上、事業規模によって認可先が変わるなど、ケースバイケースで手続きが難航する場合もあります。
また、社会福祉法人の活動費用は、大部分が補助金や助成金で賄われています。収益事業も可能ですが、さまざまな制約があり、自由に事業を展開することはできません。補助金や助成金の申請や申し込みも簡単ではないため、時間や手間がかかるでしょう。
さらに、定期的な報告書の提出や、運営内容に対する指導監査を受ける必要があります。報告書の内容に問題があると、業務停止や解散命令といったリスクもあるため、入念な準備と対応が求められます。
社会福祉法人を設立する方法
社会福祉法人の設立方法について見ていきましょう。
社会福祉法人の設立要件
社会福祉法人を設立するためには、以下の要件を満たしている必要があります。
- 所轄庁からの認可
- 役員の設置
- 資産等
- 定款
社会福祉法人の設立には、原則として法人の主たる事務所の所在都道府県による認可が必要です。役員に関する要件は、理事、監事、評議員の最低定員数や、名目上の役員就任の禁止事項などです。関係性や専門知識の有無など、さまざまな要件を満たす必要があります。
また、資産等の要件は社会福祉施設を経営する法人か否かにより変わります。前者は、事業運営に必要なすべての物件について所有権を保有、もしくは国または地方公共団体から使用許可を受けている必要があります。
後者の場合、経済状態の不安定さをカバーするために、原則1億円以上の財産を証明するなどが含まれます。設立要件は細かく定められているため、社会福祉法人審査基準をよく確認しましょう。
社会福祉法人設立の流れ
社会福祉法人を設立する主な手続きの流れを紹介します。おおまかには、以下の手順で進めます。
- 所轄庁へ事前に設立の相談をする
- 定款や申請書類を作成する
- 行政と事前協議を行う
- 所轄庁の認可を申請する
- 法務局にて法人設立登記を行う
通常、所轄庁での事前相談は予約制で、書類もある程度持参する必要があります。定款やその他の申請書類を作成した後、所轄庁からの認可を得て、法務局にて法人設立登記を行います。
設立の手続きについて詳しくは、社会福祉法人の所在地を管轄する所轄庁に直接確認できる他、厚生労働省のホームページでも詳しく解説されているので参照してみましょう。
社会福祉法人制度改革の概要
2017年(平成29年)4月より、福祉サービスの供給体制の整備と充実を目的として、社会福祉法人制度を含む社会福祉法が大幅に改正されています。主な制度改革の項目は以下の通りです。
- 経営組織強化
- 事業運営における透明性
- 財務規律の向上
- 公益的な取り組みと責務
- 行政関与
社会福祉法人を設立する際には、法改正の内容にも注目しておく必要があります。
社会福祉法人の役割を知り設立に向けて準備しよう
社会福祉法人は、社会生活上の困難を抱える人に対して、さまざまな支援やサービスを提供する役割を担っています。社会福祉法人は非営利団体であり、補助金や助成金を利用して事業資金を調達できる点や、税制の優遇を受けられるなどのメリットがあります。
一方、細かな要件を満たし、許可の申請や資料の作成など複雑な手順を踏まなければならないため、計画的かつ入念に準備を進めることが大切です。
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