現在ビジネスでは、「リスキリング」の考えが普及しようとしています。世界的な経済会議でも注目されたリスキリングは、DXに伴うデジタル変革へ対応するためにも必要な概念となっています。
リスキリングを行うとメリットが大きいですが、準備・コスト面でデメリットもあります。事前準備をしっかり行い成功へ導きましょう。
今回はリスキリングの概要やメリット・デメリット、さらに成功させるポイントを解説していきます。
リスキリングとは?必要とされている背景や似た言葉との違いをご紹介
リスキリングとは「技術の革新やビジネスモデルの進化・変化へ対応するための学習」を指します。ちなみに英語では「Re-skilling」と書くのですが、日本語で筆記すると「リスキリング」となってしまうため意味の区切りが少々理解しにくいです。ですから「リスキリングはリ・スキリングのことで学び直しのことだ」という風に覚えておけば理解がしやすいと思います。
リスキリングが必要とされている背景とは
リスキリングが必要とされているのは、次のような背景が関係しています。
世界的な議題となっている
世界経済フォーラム年次総会である「ダボス会議(2020年)」において、リスキリングの概念は重要な議題として取り上げられました。
具体的には「第4次産業革命(情報技術等の活用によってもたらされる、第3次産業革命の次の段階)へ対応するため、2030年を節目として世界の10億人によい教育やスキル・業務等を提供する」というのが目的となっています。リスキリング革命が成功すれば、IT進化に伴う急激な変化にも人材レベルで対応しやすくなるでしょう。
日本でも政府が推進している
世界的な注目に伴い、日本国内でも政府がリスキリングの導入を推進しています。
具体的にはリスキリング〜転職を一気貫通でまとめて支援したり、各企業へのサポートを行ったりといった施策を想定しています。今後政府の施策推進が進めば、支援制度を使いながら効率よくリスキリングを促進できる体制を社内で整備したりできるでしょう。
コロナ禍といった中でのニューノーマルな働き方への対応
コロナ禍で従来のオフィスワークが通用しなくなり、完全に「テレワーク」化を行って遠隔業務を実現したり、オフィスワークとテレワークを併用する「ハイブリッドワーク」を導入したりする企業が増えました。
こういったニューノーマルな働き方の中で、必要なかったのに実施していた業務や、代わりに必要となってきた業務が明確となりました。こういった業務体制の変化へ対応できるようにするためにも、リスキリングで業務関連の知識・スキルを再学習してアップデートする必要性が増しています。
慢性的な人材不足の解決
DXによってデジタル改革を実現して、データ基盤でビジネスが進むように体制を整備する需要も増えてきました。ただしそれを実現する人材は慢性的に不足しており、急いで人材を確保することが求められています。
そこでリスキリングによって人材を増やしてDX関連の業務に充てようという動きも広まりつつあります。実際リスキリングとDXがいっしょになって解説されるケースも多く、DXに必要となるIT技術・知識を学習してもらうためにリスキリングを導入しようという考えも広まっています。
リスキリングと似た言葉には何があるの?
リスキリングと似た言葉には、次のようなものがあります。
リカレント教育
社会人が退職・休業を行って業務から離脱して、学習機関で学習し直す体系を「リカレント教育」と呼びます。
リカレント教育では業務から完全に離脱してから学習を行うため、並行して業務を実施しながら学習することを想定していません。対してリスキリングでは仕事をしながら並行して学習を行い、必要な知識・スキルを身に付けて進化・変化へ備えるのが前提となっています。
アンラーニング
「学習棄却」と呼ばれることもある「アンラーニング」は、現在の業務内容といった仕組みをいったん廃棄することで新体制を導入して実施する動きを指します。
ビジネスモデルの変化・進化の中で、必要とされなくなる、あるいは必要度が一気に低下する知識・スキルというのは多いです。特にIT業種の方は古い知識・スキルと新知識・スキルが混在しやすい状況にあり、アンラーニングの必要性は高いと言えるでしょう。
リスキリングではアンラーニングのように古い知識・スキルを廃棄することを前提としていません。ただし学習の上で邪魔になるような知識・スキルであれば、アンラーニングの概念に基づいて棄却することも求められるでしょう。
企業がリスキリングを実施するメリット・デメリットとは
企業がリスキリングを実施するメリット・デメリットは次の通りです。
リスキリングを実施するメリット
リスキリングには企業成長や業務創出といった点でメリットがあります。
・継続的な企業成長へつながる
・従業員満足度が向上しやすくなる
・新規ビジネスを創出しやすくなる
まずリスキリングによって人材が成長すると、業務関連のコストが削減されると同時に無駄な業務が減少して効率化されます。すると業務が円滑に進むようになるため、企業成長を継続的に実現できるのがメリットです。
また教育プログラムを上手く通常業務と並行運用することで、学びを得たい従業員の満足度を向上させて社内定着率を向上させることも可能となっています。中小企業では人材の定着も課題となっているため、リスキリングを成功させることによるメリットは大きいでしょう。
さらにリスキリングによって新規に得た知識・スキルが、既存の業務を1から見直すきっかけになることもあります。たとえばリスキリング対象者の意見を基に新規ビジネスを創出して、さらに企業成長を促進することまで可能です。
リスキリングを実施するデメリット
リスキリングはすぐに実施できるものではないため、事前に注意すべき点も多いです。
・事前に自社課題や目標などを考える必要がある
・どうやって学習と業務を社内で両立できるか検討する必要がある
・必要な予算を用意しておく必要がある
まず事前に自社の人材面での課題や、リスキリングによって課題をどうやって解決したいのか目標を考える必要があります。明確になっていないと効率的なリスキリング施策が実施できません。
また学習と業務をリスキリングでは同時に行うため、どうやって両者のバランスを取っていくのかも重要です。片方がもう片方を圧迫してしまう状況になると、学習も業務も円滑に進まなくなるリスクがあるので注意しましょう。
さらにリスキリングは継続して行う必要があるため、必要な予算を余裕を持って用意してから実施する必要があります。事前に対象予定者や学習内容などを想定して、必要な予算を確保できるように立ち回りましょう。
リスキリングを成功させるためのポイントとは
リスキリングを成功させるために、次のポイントを押さえておいてください。
・現場にリスキリングの意義を上手く説明する
・インセンティブなどを用意してリスキリングを推進できる環境を整備する
・リスキリングが成功した人材を積極的にDX担当などへ回す
まず現場にリスキリングの意義ややるべき理由などをしっかり説明できるように、経営層がリスキリングの概要やメリット・注意点などを理解する必要があります。
さらにリスキリング成功者に褒章を与えるといったインセンティブの準備で、リスキリングを継続的に推進できる環境を整備するのも重要です。リスキリングが社内全体で当たり前になるような計画を導入しましょう。
またリスキリング成功でITリテラシー向上などができた人材は、積極的に登用してみてください。たとえばDX担当へ回すとデジタル改革が進みやすくなるでしょう。
まとめ
今回はリスキリングの概要やメリット・デメリット、成功のポイントなどを解説してきました。
リスキリングはすぐに実施できるものではありませんが、eラーニングの導入など、継続して学べる体制を社内で構築して、人材をスキルアップさせるのに重要です。特にDXが必要な企業では、リスキリングによる人材確保が重要になってくるでしょう。
ぜひリスキリングを成功させて、新ビジネス創出やDX達成といった効果を得てみてください。
参考
株式会社リスキル:eラーニング動画講座