2006年に施行された会社法によって誕生した「合同会社」。
比較的新しい会社形態なので「聞いたことはあるが詳しくは知らない」こんな風に考えている人も多いと思います。
この記事では、合同会社を設立する方法や流れ、メリット・デメリットについてお伝えしていきます。
合同会社とは?
合同会社とは、2006年に登場した会社形態の1つで、LLC(Limited Liability Company)とも呼ばれています。
アメリカでは株式会社と同じくらい普及していますが、日本では全体の2割程度と知名度は高くありません。
株式会社のように上場することはできませんが、初期費用は非常に安く、年商1,000万円以下のスタートアップ企業や、一般消費者向けのサービスを提供する企業に向いている設立方法です。
一般的には中小企業が選択する設立方法ですが、合同会社は経営の自由度が高く、「Apple Japan」「アマゾンジャパン」「西友」など、大手企業でも合同会社として設立している場合もあります。
合同会社を設立するメリット
ここからは、合同会社を設立するメリットを紹介していきます。
合同会社を設立する主なメリットは、以下の3つです。
- 経営の自由度が高い
- 設立費用が安い
- 迅速な意思決定が可能
それぞれ詳しく紹介していきます。
経営の自由度が高い
1つ目のメリットは「経営の自由度が高い」です。
株式会社の場合は、必ず出資比率に合わせた利益を分配する必要がありますが、合同会社の場合は、社員間で自由に利益を配分することができます。
つまり、社員1人一人の貢献度に合わせた利益配分が可能です。
また、合同会社は「株式」を発行することができないため、意思決定も株主総会ではなく、社員間でおこなわれます。
企業としての方向性を自由に変更・決定できるため、スタートアップ企業には非常に大きなメリットでしょう。
設立費用が安い
2つ目のメリットは「設立費用が安い」です。
株式会社を設立する場合は、公証役場による定款の認証が必須となるため、50,000円の手数料が発生します。
しかし、合同会社なら公証役場による定款の認証は不要で、定款用収入印紙(40,000円)も電子定款で作成すれば、設立費用は90,000円も抑えることができます。
また、合同会社であれば決算公告義務もないため、60,000円の官報掲載費も必要ありません。
登録免許税も、株式会社は150,000円ですが、合同会社なら60,000円しかかかりません。
設立費用やランニングコストの金額だけなら、株式会社よりも合同会社の方がお得です。
迅速な意思決定が可能
3つ目のメリットは「迅速な意思決定が可能」です。
株式会社では、企業としての方向性や重要な事項を決定するために、株主総会を開催しなくてはいけません。
しかし、合同会社の出資者は基本的に社員(経営者)のみなので、迅速な意思決定が可能になります。
そのため、決定権をすべて自分で持っていきたい人には、合同会社での設立がおすすめです。
合同会社を設立するデメリット
それでは次に、合同会社を設立するデメリットを紹介していきます。
合同会社を設立する主なデメリットは、以下の3つです。
- 大規模な資金調達ができない
- 信用性は株式会社に劣る
- 社員間のトラブルが起きやすい
それぞれ詳しく紹介していきます。
大規模な資金調達ができない
1つ目のデメリットは「大規模な資金調達ができない」です。
合同会社では資金調達の方法が限られており、株式会社のように大規模な資金調達をおこなうのは現実的ではありません。
主な資金調達の方法は、銀行からの融資や国からの補助金・助成金などがメインです。
また、株式会社よりも信用性が劣るため、銀行からの融資金額にもあまり期待はできないでしょう。
信用性は株式会社に劣る
2つ目のデメリットは「信用性は株式会社に劣る」です。
合同会社が株式会社よりも信用性が劣る大きな理由は、決算公告の義務がないことにあります。
また、日本では合同会社という会社形態そのものが浸透していないため、求人を掲載していても優秀な人材が集まらない可能性も高いでしょう。
社員間のトラブルが起きやすい
3つ目のデメリットは「社員間のトラブルが起きやすい」です。
利益配分も自由で意思決定のスピードも速いため、社員間のトラブルは起こりやすくなります。
また、このような問題は解決しづらく、業務に支障をきたしてしまうことも珍しくありません。
トラブルを回避するためにも合同会社を設立するなら、できる限り信頼できるパートナーを選びましょう。
合同会社を設立する方法・流れ
ここからは、合同会社を設立する方法をステップごとに紹介していきます。
合同会社の設立方法は、以下のような流れで進めていきます。
- 設立項目の決定
- 必要書類の作成
- 必要書類の提出
それぞれ詳しく紹介していきます。
①設立項目の決定
まずは、以下の設立項目を決めましょう。
- 商号
- 事業目的
- 本店所在地
- 資本金
- 社員構成
- 事業年度
それぞれに細かいルールがありますが、あまり難しく考える必要はありません。
しかし、定款に記載されていない事業をおこなってはいけないため、事業目的はなるべく詳しく複数の事業を記載していきましょう。
事業目的の変更や追加の手続きには手数料が発生するため、将来的におこなう予定のある事業も記載しておくと手間が省けます。
また、資本金は1円からでも会社を設立することができますが、資本金で企業としての規模を評価している取引先も多いため、なるべく大きい金額にしておいた方がいいでしょう。
②必要書類の作成
合同会社を設立するためには、以下の9つの書類が必要になります。
- 定款(電子定款)
- 印鑑届書
- 社員の印鑑登録証明書
- 払込証明書
- 本店所在地決定書
- 代表社員就任承諾書
- 登記用紙と同一の用紙
- 収入印紙
- 合同会社設立登記申請書
これらの書類を法務局に提出することで、合同会社を設立することができます。
③必要書類の提出
法務局に提出する前に、先ほど紹介した書類を決められた順番でホッチキスでまとめておきましょう。
- 登記申請書
- 本店所在地決定書
- 代表社員の就任承諾書
- 代表社員の印鑑証明書
- 払込証明書
上記の順番で書類を並べてホッチキスでまとめて、見開き部分には会社実印を捺印します。
これらの書類を法務局の窓口に提出すれば手続きは完了です。
また、書類に不備がなければ、法務局から連絡がくることはありません。
合同会社から株式会社に変更するためには?
合同会社として事業を進めていく中で、「資金調達方法を広げたい」「株式上場がしたい」といった理由で、株式会社に変更したいと考えることがあるでしょう。
このような場合は、合同会社として設立していても、定められた手続きを行うことで株式会社への組織変更が可能です。
合同会社から株式会社に変更するためには、以下の手続きをおこなう必要があります。
- 組織変更計画書を作成し、社員全員の合意を得る
- 債権者保護の手続きを行う
- 組織変更の公告を行う
- 株式会社の設立登記を行う
- 合同会社の組織変更による解散登記の申請を行う
- 税務署や都道府県税事務所・市町村役場・年金事務所などに変更の届出書を提出する
これらの手続きが必要になることから、組織変更には、最低でも2ヶ月程度の期間がかかります。
また、「債権者」とは、融資先の銀行などが該当します。
債権者は、組織変更により不利益を被る可能性もあるため、「組織を変更するので、意義があれば申し出てください」という機会が与えられています。
このことを「債権者保護手続き」といいます。
会社形態の変更について、債権者が1名でも異議を申し立てた場合は、株式会社への変更はできません。
いずれにせよ簡単に変更できるわけではないため、変更期間にはある程度の余裕を持っておきましょう。
合同会社に向いている業種
それでは次に、合同会社に向いている業種を紹介していきます。
従業員数が数人程度の小規模事業
合同会社は、迅速な意思決定や利益分配などを自由におこなえることから、スタートアップに最適です。
社員数が数人の小規模な会社なら、合同会社の恩恵は大きくなります。
自由に経営スタイルで柔軟にサービスを展開していきたい人には、合同会社がおすすめです。
一般消費者向けのサービスを提供している事業
合同会社には、株式会社に比べて知名度が低いという欠点があります。
そのため、社会的な信頼度という意味では株式会社に劣っているのが現状です。
しかし、BtoCのビジネスでは顧客が会社形態を考慮していないケースが多く、社会的信用度によるデメリットはほとんどありません。
そのため、サービス名を前面に押し出すITサービスはもちろん、カフェやサロン、学習塾やペットショップなどは、合同会社で設立するメリットが大きい業種といえるでしょう。
年商1,000万円以下の個人事業主
個人事業主から法人化する場合にも、低コストで設立できる合同会社がおすすめです。
また、消費税の納税義務が発生する年商1,000万円以上になるときに法人化することで、2年間の消費税納税免除を活用でき、節税効果を得られます。
合同会社にかかる税金
当たり前ですが、合同会社も株式会社と同じように「税金」がかかります。
合同会社に課せられる税金は、主に以下の4つです。
- 法人税
- 法人住民税
- 法人事業税
- 消費税
それぞれ詳しく紹介していきます。
法人税
1つ目は「法人税」です。
法人税とは、会社の所得を課税対象とする国税の1つです。
社員総会で承認された決算書の当期利益がベースとなり、税率は課税所得の23.2%となっています。
ただし、中小企業には「軽減税率制度」があるため、資本金が1億円以下で、年間所得金額のうち800万円以下の部分には19%の税率が適用されます。
法人住民税
2つ目は「法人住民税」です。
法人住民税には、市町村に支払う「市町村民税」と、都道府県に支払う「道府県民税」の2つがあります。
また、税率は「所得割」と「均等割」というもので決定され、市町村や都道府県ごとに定められています。
所得割は前年度の所得に対して課税され、税率は法人税額によって異なります。
均等割は所得に関係なく定額が課税され、納税額は資本金などによって異なります。
法人事業税
3つ目は「法人事業税」です。
法人事業税とは、都道府県の行政サービスや、公共サービスの利用料として負担する地方税金の1つです。
「法人税」「法人住民税」「法人事業税」は、決算日から2カ月後の納付が義務付けられています。
3つあわせて、所得の約35%の税金がかかると覚えておきましょう。
消費税
4つ目は「消費税」です。
消費税とは、商品やサービスの消費に課される税金です。
消費税は、設立後2年間の売り上げが1,000万円以下の場合に免除となる免税制度があるため、起業初期にはかからない場合がほとんどです。
しかし、次のような場合には免除されず、消費税の納付が求められるため注意しておきましょう。
- 事業年度開始日の資本金が1,000万円以上の場合
- 上半期の売り上げが1,000万円を超えた場合
消費税の免税を受けるためには、資本金などの設定にも注意しておく必要があります。
税金は考えなくてはならないことが数多くあります。
特に、設立して間もない頃は、事業を運営していくことで手一杯になってしまうかもしれません。
面倒に感じるかもしれませんが、税金は必ず納めないといけません。
税金関係は税理士に依頼したり会計ソフトを利用したりして、手間を省くことをおすすめします。
合同会社の資金調達方法
合同会社には、株式会社と比べて大規模な資金調達がしにくいというデメリットがあります。
当たり前ですが、設立時だけでなく会社には運営資金が必要です。
安定した経営をおこなうためにも、資金調達の方法を知っておきましょう。
社員による出資
合同会社設立の際、社員の出資金(資本金)が元手となります。
増資の際も、社員から出資してもらうことによって資金を調達することが可能です。
合同会社の社員全員に業務執行権と代表権がありますが、定款により業務執行権のない社員を定めることができます。
また、配当に関しても定款で定めることができるため、業務には関わらないが出資してもらい、そのかわり利益を分配するという形で資金を調達することもできます。
融資
合同会社も株式会社などと同じように、金融機関から融資を受けることができます。
創業期に受けられる融資は、主に以下の3つです。
- 日本政策金融公庫
- 制度融資(信用保証協会付融資)
- 自治体独自の融資制度
融資審査のポイントとなるのは「自己資金」と「事業計画書」です。
融資担当者は「自己資金をいかに貯めてきたか」というところでも、事業に対する熱意を確認します。
クレジットローンなどで一時的に持ってきたお金は見せ金とみなされ評価されません。
評価される自己資金は「融資申し込み前に支出した事業用経費の領収書分」や「きちとんと手続きをした上での知人・親戚からの借入」「コツコツ貯めたお金だと通帳をみてわかるもの」などです。
そして、事業計画書においては綿密な計画が立てられているかどうかがポイントとなります。
担当者は、滞りなく返済できるような事業であるかどうかだけを確認しています。
そのため、現実的な事業計画を立て、それに見合った額の融資を申請することが大切です。
クラウドファンディング
近年話題になっている「クラウドファンディング」も、合同会社における資金調達方法の1つです。
そもそもクラウドファンディングは、大きく「非投資タイプ」と「投資タイプ」に分類できます。
「非投資タイプ」には寄付型と購入型があります。
- 寄付型:以前からあった寄付・募金をネットで一般的に募集する
- 購入型:新しい製品やサービスのプロジェクトに資金を提供する
目標額が集まるとプロジェクトが開始され、それによって生まれた製品・サービスを出資者が対価として受け取る仕組みです。
「投資タイプ」のクラウドファンディングは、いわゆる金融商品です。
投資タイプには、ファンド型・貸付型・株式型の3つがあります。
ファンド型:事業に対して個人投資家から出資を募る
貸付型:企業や個人に資金を提供し、利率に応じた分配金を得る
株式型:株式市場に上場していない企業の株の権利に投資する
※合同会社には株がないため、株式型は利用できません。
合同会社がクラウドファンディングで資金調達をするなら、非投資タイプの「購入型」がおすすめです。
合同会社の設立方法まとめ
今回は、合同会社を設立する方法や流れ、メリット・デメリットについて解説しました。
合同会社の魅力は、なんといっても「設立費用の安さ」と「経営のしやすさ」です。
そのため、個人事業主として働いている人が、節税目的で設立するケースも増えてきています。
また、合同会社の設立を検討している人は、快適に働けるオフィスを探しているのではないでしょうか?
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