行政書士の独立・開業は、手続きのハードルが低めで比較的取り組みやすい傾向にあります。ただ、安定した事業運営を行うためには、書類作成のスペシャリストとしての日常業務と経営の両立や、ライバルとの差別化などの対策も必要です。
本記事では、行政書士の独立開業について、メリットやデメリット、開業手続きの流れや費用について解説します。行政書士として独立を検討する上で知っておきたい情報をまとめていますので、ぜひご覧ください。
行政書士としていきなり独立・開業するのは難しい?
結論から言うと、行政書士として独立・開業するハードルはさほど難しくありません。また、書類作成の需要が高まっていることから市場のニーズが拡大傾向にあり、仕事を受注するために有利な状況でもあります。
最初に行政書士事務所や法律事務所に就職し、実務を経験してから独立する方法も可能です。ただ、有資格者として最初からいきなり開業しても問題はなく、未経験から開業するケースも見られます。継続的に仕事を受注するために計画的に準備を進めることで、スムーズな独立開業につながるでしょう。
行政書士として独立するメリット
行政書士として独立するメリットとしては、以下の4点が挙げられます。
- 低コストで独立開業できる
- 自分のペースで仕事ができる
- 定年退職がない
- 能力次第で高収入を目指せる
それぞれについて詳しく解説します。
低コストで独立開業できる
行政書士として独立開業する際のコストを抑えやすい傾向にあります。自宅で仕事ができるため、事務所や店舗などを借りる必要はありません。また、パソコンなど事務に必要な設備がある程度揃っていれば、当面は業務をこなせるでしょう。
また、高度で幅広い知識と経験が必要となる士業と比べて、業務範囲がある程度限られているため、顧客対応などサービス維持コストもかからない可能性があります。
自分のペースで仕事ができる
法律事務所などのように勤務時間は決まっていないため、自分のペースで働くことができます。繁忙期など業務量が多い場合は長時間働く必要がありますが、子育てや介護など必要なときにまとまった時間を取りやすく、場所や時間に囚われない働き方を目指す人にも向いています。
定年退職がない
行政書士は定年退職がない点もメリットです。経験年数が増えるほど実績と信頼が積み重なり、個人でも信用とキャリアを活かして仕事を獲得しやすくなるでしょう。
また、行政書士という専門家として個人活動につなげることも可能です。書籍の出版やセミナー、講演などを定期的に開催し日常業務とは別の収入源を確立できれば、安定収入が望めます。
能力次第で高収入を目指せる
行政書士だけでなく、どの職種でも独立開業により報酬の上限がなくなるため、能力や働き方次第では高収入が期待できるでしょう。企業や事務所での勤務は給与体系に沿った報酬が決められています。インセンティブがあっても制度の設定金額があるため、自由度は高くありません。
ただ、独立してやっていけるだけの能力があっても、営業がうまくいかない、顧客がつきにくいなどで収入が思うように上がらない可能性もあるため、対策は必要でしょう。
行政書士として独立するデメリット
「行政書士はやめとけ・食えない」といった意見もあるように、行政書士として独立開業する上で、働き方や報酬面などさまざまなメリットがある一方、デメリットもあります。考えられるデメリットは以下の通りです。
- ライバルが多い
- 仕事を獲得するまでのハードルが高い
- 通常業務と経営の両立が大変
各項目について見ていきましょう。
ライバルが多い
行政書士として活動するために、登録資格の取得が必要です。行政書士の登録資格は、行政書士試験に合格した人に加えて、弁護士や税理士の有資格者も登録できるため、市場全体におけるライバルが多い傾向にあります。
また、官公庁への許認可申請や契約書の作成などと相性が良いこともあり、顧問契約の弁護士や税理士などへワンストップで依頼が入るケースも見られます。顧客を見つけるためにも、ライバルとの差別化についてよく検討する必要があるでしょう。
仕事を取るまでのハードルが高い
行政書士の仕事のニーズは高いものの、前述のライバルが多い背景もあり、実際に受注するまでのハードルは高めです。それまでの人脈や取引先などのつてで契約を取れれば見通しが付きますが、1から営業して契約を取り付けるとなると大変なケースも少なくありません。
交流会やセミナーなどの会場で名刺交換や挨拶を行う、Webサイトを立ち上げてオンライン上で発信する、など営業宣伝を続ける必要があります。受注した1つひとつの仕事を大切にこなしていくことで、信頼関係が生まれ、次の仕事につながるでしょう。
通常業務と事務所経営の両立が大変
独立開業では、行政書士としての業務と事務所経営を両立させる必要があります。企業や事務所に所属している場合は、与えられた業務をこなすだけで問題ありませんが、事務所の経営者として経費や各種税金に関する対応も必要です。
行政書士の活動がある程度軌道に乗り、金銭的な余裕が出てきたら事務所スタッフを雇う、外注するなどの方法で負担を軽減できるでしょう。
行政書士の独立開業までの流れと費用
ここからは、行政書士として独立開業するおおまかな流れを見ていきます。具体的な手順は以下の通りです。
- 開業資金を準備する
- 事務所の場所と事務所名を決める
- 行政書士名簿に登録申請する
- 事務所の調査を受ける
- 登録が完了し、登録証授与式に参加する
- 開業届を提出する
登録申請の手続きと並行して、事務所のWebサイトや名刺、開業挨拶状の準備や備品、設備の設置などを進めていくとスムーズでしょう。
行政書士の開業資金の目安
行政書士の開業資金として、主に以下の費用を用意する必要があります。
- 登録費用
- 事務所費用
- システム・備品購入費用
- 人件費 など
行政書士として業務を行うために、日本行政書士会連合会と各都道府県の行政書士会への登録が必要です。入会金と登録手数料として約20〜30万円前後かかります。事務所の賃料やパソコン、事務デスク、インターネット回線など業務に必要な設備費用も発生します。
行政書士の年収
行政書士の年収について公的な統計データはありませんが、求人サイトの調査データによれば平均年収は約412万円、月給換算で34万円です。国税庁の「令和元年分民間給与実態統計調査」における全国の年収平均は約458万円であり、比較すると低い傾向にあります。
ただ、独立開業している行政書士の年収は、業務量や得意分野などによって大きく異なるため、約300〜1,000万円と幅があります。
未経験でも行政書士として独立開業を目指すことは可能
行政書士として独立開業すること自体は難しくなく、試験に合格し登録申請などの手続きを行うことで誰でもスムーズに開始できます。他の士業などに比べても低コストで開業でき、ライフスタイルに合わせた働き方がしやすいですが、ライバルも多いため、仕事を獲得するための計画的な準備や営業活動が必要です。
レンタルオフィス「Re:ZONE」は、独立開業時に最適な個室タイプのプライベートオフィスを提供しています。防犯対策や設備を完備しており、業務と経営の両立をスムーズに支援可能で。オフィスの見学も受け付けていますので、お気軽にご相談ください。