企業として活動を行うためには、ステークホルダーと呼ばれる利害関係者に自社の状況を公開する必要があります。具体的には「財務諸表」と呼ばれる書類を作成した後、成長具合や資本・負債・売上・利益などを情報として公開するのがポイントです。
財務諸表の作成は法律でも義務付けられており、意味や必要性などを知っておかないと問題が出てくることもあります。ですからこれから企業を立ち上げる、あるいは立ち上げたばかりの方は財務諸表をよく理解しておきましょう。
今回は財務諸表とは何か、その必要性や読み解く際のポイントなどを解説していきます。
財務諸表とは?
財務諸表とは、「企業が自社の運営状況や現在の金銭的な動きなどを、利害関係がある人へ提示するための書類の総称」です。諸表とある通り、その種類は1つではなく複数の書類から構成されます。
利害関係者には
・株主
・投資家
・税務当局
などが存在しています。
また財務諸表は上記のような利害関係者だけでなく、一般の方にも公開されるのがポイントです。財務諸表は決算書としてIR情報などに掲載されるため、虚偽があったりすると企業の信頼性が社会的に落ちる原因ともなります。
財務諸表の必要性とは
財務諸表は次の点から必要とされています。
法律で提出・公開の義務がある
法律で財務諸表は必要な書類となっています。具体的には、まず 金融商品取引法において
・貸借対照表
・損益計算書
・キャッシュ・フロー計算書
・株主資本等変動計算書
・附属明細表
などを、上場している企業は作成・提出する必要があります。
また未上場でも会社法において
・貸借対照表
・損益計算書
・株主資本等変動計算書
・個別注記表
の4つは作成が必要です。ちなみに一部内容が違うこともあり、会社法で提出する決算書は財務諸表ではなく計算書類と呼ばれています。
このように上場・未上場の状況によって提出すべき書類が異なる点にも注意しましょう。
利害関係者が企業の情報を把握・理解する
財務諸表は単に法律で必要となっている、というだけでなく、利害関係者からの信頼性獲得のためにも必要となっています。
たとえば株主や投資家は投資先の企業がきちんと成長を達成できているか、確認しながら支援する金額を決定しています。また取引先の企業は関係継続を見直す際に、自社の財務諸表などから情報を収集して経営状況を確認するのもポイントです。さらに従業員といったステークホルダーも情報を確認することがあります。
このように自社の安全性などを確認する際に財務諸表は使われるので、仮に提出ができなかったり遅れたりするとトラブルの元になるでしょう。
分析において活用を行う
財務諸表は自社の経営状況を分析する際にも役立ちます。たとえば貸借対照表からは今の資本や負債、現金の割合などが明らかになります。たとえば仮に一見収益が上がっているように見えても、現状手元に現金が少ない場合は経営に影響が出てくる可能性があります。こういった問題を貸借対照表から事前に確認して、対策を行えるのがポイントです。
利害関係者への情報公開だけでなく自社の経営状況を改善していく際にも使えるので、財務諸表はじっくりと詳細まで作成する必要があります。
財務諸表の種類
ここでは財務諸表の種類・特徴を確認していきます。
貸借対照表
現状の財政を
・資産:所有している全財産
・負債:財産のうち返済義務があるもの
・純資産:返済義務のない純粋な財産
の3つに分けながら記載していく書類です。
有形・無形を問わずあらゆる資産を計算しなくてはいけません。また貸借対照表において資産が一見多くても、負債が大きく純資産が少ない場合は経営危機に陥る可能性があるので注意しましょう。
貸借対照表は損益計算書とセットになっており、いっしょに確認することで財政詳細を確実に把握可能です。
損益計算書
一定期間(決算時期までの期間)に、どのくらい稼いだのかといった損益の状態を確認するための書類です。
・売上高
・純利益
・営業利益
などから構成されており、売上から各費用を削ったりすることで他の項目を把握することが可能となっています。
たとえば売上高が多くても、仕入れや製造などで余計なコストが発生していると純利益などは目減りして売上高から大きく下がります。こういった状況だと成長に影響が出る可能性があるので、いち早く是正する必要があるでしょう。
キャッシュ・フロー計算書
現金・あるいは現金に近い扱いをされる項目に特化した決算書です。
・営業
・投資
・財務
の3つからどのくらいお金が入ってきたか、あるいは出て行ったかを可視化できるのがポイントになります。一部資産を除いてお金関連のみに絞ることで、売掛金や買掛金といった入出金のタイミングがずれてしまう項目も正確に可視化・現状のお金の回り方を確認できるのがメリットです。
ちなみに貸借対照表と損益計算書・キャッシュフロー計算書の3つはいわゆる財務三表と呼ばれるものであり、特に重要な書類となっています。キャッシュ・フロー計算書は未上場企業では必須ではありませんが、上場済の場合は確認しておきましょう。
株主資本等変動計算書
企業の純粋な資産のみに絞った決算書です。純資産が急に増減しても正確に判断ができます。
・純利益の配当
・増資・減資
・自己株式の取得
などによって純資産は変動していきます。純資産から自社が成長しているか減衰しているのかを経営判断する際に必要です。
附属明細表
財務三表において、その内容や注意点を補足するための書類です。
・固定資産
・借入金
・販売費
といった項目の明細表を作成することで、期首・期末における帳簿価額などを把握できるようになります。
個別注記表
こちらは厳密にいうと財務諸表ではなく計算書類の一部ですが、関係があるため記載しています。会社法において、未上場企業などが作成の義務を負う書類です。
・会計方針
・貸借対照表
・損益計算書
などに対して、現状の財産や損益のステータスを判断するためのポイント・概要を記載していくのがポイントです。
財務諸表を読み解く際のポイント
財務諸表を読み解く際には、次のポイントを把握しておいてください。
分析の方法について知っておく
財務諸表に関する分析は、
・収益性:収益を上げるための力具合
・生産性:経営資源の活用力
・安全性:支払い能力に関する安全性
・成長性:将来的な成長などを図る
・効率性:収益における効率の具合
の5点から情報確認を行い実行に移す必要があります。
たとえば収益性は売上高営業利益率などを計算して確認すると把握可能です。こういった指標の数値が大きいほど、経営における収益性が高くなっています。また生産性については労働生産性などを確認することで、コストと成果の比較を行うことが可能です。
分析作業自体は難しく、時間の掛かる作業ですが経営の効率化には必要になってきます。ぜひ作業メンバーを確保して分析を行ってみてください。
会計システムで財政状況の把握・分析作業を効率化する
財務三表といった財務諸表の作成や分析は、慣れるのに時間が掛かります。また作業にミスがあると計算数値が正確でなくなり、正確な経営判断ができなくなるリスクもあります。
こういったリスクを会計システムを使うことで解決可能です。会計システムには計算の自動化や自動反映などの機能が搭載されています。また項目ごとのデータ絞り込みや分析のポイントとなるデータを素早く知ることなども可能であり、通常の帳簿作成や分析の手間を削減して効率化してくれるのがメリットです。
ぜひ会計システムを導入して財務諸表関連作業を効率化してみてください。
まとめ
今回は財務諸表の概要や種類・読み解くポイントなどを解説してきました。
財務諸表は法律的に提出の必要性がある書類ですが、自社の経営状況を多方面から分析する際にも役立てられます。ぜひ会計システムなどを使って負担を減らし、効率よく作成や分析を行ってみてください。