不動産投資は、ワンルーム投資など従来に比べてハードルが下がり、参入しやすくなっています。会社員でも副業として不動産投資を行うケースも増えており、投資が軌道に乗ってきたら、法人化するかどうか迷う人も多いのではないでしょうか。会社を設立して不動産を所有するタイミングや目安の考え方を押さえておくと、必要なときに計画的に進められるでしょう。
本記事では、不動産投資で法人化するメリットとデメリット、会社設立の目安、注意点などについて解説します。不動産投資に興味のある人や、不動産投資の法人化について知りたい人はぜひ参考にしてください。
不動産投資の法人化とは
不動産投資の法人化とは、不動産の運営主体を、個人から法人へと切り替えることです。資産として保有している不動産の管理を目的として会社を設立します。また、不動産の所有者がそれまで個人で受け取っていた報酬は法人収入となり、役員報酬という形で受け取ります。
古くから富裕層の税金対策として活用されてきたスキームの1つですが、最近は不動産投資の参入ハードルが下がってきたこともあり、会社員の副業としての不動産投資における税金対策としても注目が集まっています。
不動産投資を法人化するメリット
会社設立時には、同じく定款や登記書類の作成、会社設立登記といった手続きに時間や手間がかかります。とはいえ、不動産投資を法人化することで、こうした負担を上回るさまざまなメリットが見込めます。ここでは、不動産投資を法人化するメリットを紹介します。
法人と個人の税率の差を利用して節税できる
不動産投資の法人化における最大のメリットは、節税効果です。不動産投資を個人から法人へと移行することで、所得税率や計算方法が変わるため、節税につながります。
個人の場合、税率は課税所得が増えるほど高くなる累進課税制ですが、法人の税率は異なります。個人のままだと、課税所得が増えても手取り額が増えにくいため、個人の所得税率が法人税率を超えそうなタイミングで、法人への切り替えを検討すると良いでしょう。
また、法人の方が個人よりも経費として組み込める支出の範囲が広く、課税所得を抑えやすい傾向があります。
青色申告の赤字を10年繰り越せる
青色申告とは、確定申告の際に複式簿記式で会計帳簿をつける方法です。青色申告で赤字(欠損金)を繰り越せる期間は、個人の場合は3年間ですが、法人では10年間と長く設定されています。
黒字の期でも、繰り越している赤字分を相殺すれば課税所得が減るため、税額を抑えられます。また、今期が赤字で前期が黒字の場合、赤字を相殺することで前期分としてすでに納めた税金の還付を受けられる場合もあります。
不動産投資では、空室の増加や修繕費の増加などによって赤字になる年も考えられます。節税効果が10年間続く法人の方が、節税メリットは大きくなるでしょう。
相続時の節税にもつながる
不動産投資の法人化により、相続時の節税効果を得られる場合もあります。個人の不動産については、所有者である個人が亡くなると、資産の不動産は相続人へ引き継がれ、評価額に応じた相続税を支払う必要があります。
一方、法人が所有する不動産の場合、会社の代表者が亡くなっても、不動産の所有者は法人であり、代表者を変更するだけで運用は継続されます。よって、相続税はかかりません。
ただし、被相続人が株式を100%保有している場合、個人での不動産所有と同等の評価になる可能性もあります。また、法人としての建物の所有期間が3年以内だと評価が上がり、相続税対策の効果が薄くなる場合もあるため、税理士などに事前に相談してみましょう。
減価償却を調整できる
個人の場合、建物などの資産の減価償却費は、強制的に決められた金額を償却する必要があります。一方、法人では、任意償却といって、規定金額の範囲であれば減価償却額を調整することが可能です。
減価償却費を上限より抑えることで、不動産所得が拡大し、納税額は多くなる可能性があります。ただし、利益が増えれば金融機関からの評価がアップするため、融資を受けやすくなるというメリットが考えられます。
不動産投資を法人化するデメリット
不動産投資の法人化が必ずしもメリットになるとは限らず、デメリットも存在します。ここでは、不動産投資における法人化のデメリットを見ていきましょう。
会社設立の手続きや法人の維持費用がかかる
法人化する際には、会社設立の手続きが必要です。個人事業主の開業と違って、定款などの書類作成や印鑑の制作、法務局への提出などさまざまな手続きが発生し、最短でも1週間以上を要します。
加えて、法人になると税務処理や会計処理が複雑になるため、通常は税理士に委託することになります。顧問契約を結ぶとなると、年額で約50万円~70万円が維持費用として必要です。ただ、事業の規模が大きくなるほど費用対効果は高まります。
長期譲渡所得の優遇税制は利用できない
個人では、不動産の所有期間が5年以内の場合、売却した所得は短期譲渡所得となり、所得税30%、住民税9%の計39%の税率が課せられます。5年を超えて所有した不動産の売却益は長期譲渡所得となり、所得税15%、住民税5%の計20%の税率になります。これを、長期譲渡所得の優遇措置と言います。
この優遇措置は個人に対するものであり、法人には適用されません。また、普通法人の税率は、譲渡益に対して23.2%(所得800万円以下は15%)で、他に法人事業税や法人住民税がかかります。よって、不動産売却の際には法人の方が個人より多くの税金を支払うことになるでしょう。
不動産投資において法人化すべきタイミングの目安
不動産投資の法人化に最適なタイミングとして、代表的な考え方は、個人の税率が法人の税率を上回るポイントと言われます。具体的には、不動産事業が黒字運営で、課税所得が900万円前後のラインです。
これは、個人の所得税率が23%から33%に上がる境目の金額であり、法人税率の23.2%を超えるため、法人化した方が節税になる計算です。ただし、法人の税率は資本金額や法人の種類などによって異なります。法人事業税や法人住民税なども含めて比較するためには、より細かな比較が必要です。
不動産投資の法人化における注意点
不動産投資の法人化で注意したい項目は、以下の通りです。
- 赤字でも7万円の法人住民税がかかる(法人税均等割)
- 家族に支払う役員報酬の妥当性が必要
- 会社の就業規定で兼業が禁止されている場合は会社設立は難しい
法人になると課税所得が赤字でも、最低額の法人住民税7万円を支払う必要があります。また、会社で兼業が禁止されていても、本人の親や配偶者を代表者とし、本人は株主として登録できる可能性が高いでしょう。
不動産投資の法人化を成功させよう
不動産投資を法人化することで、節税効果や融資面でのメリットが期待できます。法人化というと手続きが複雑なイメージがあるかもしれませんが、実際には運営主体が移行するだけで、不動産投資の業務内容はほぼ変わりません。
今回紹介した法人化の目安タイミングも参考にして、円滑な不動産投資を実現しましょう。
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参考
参考:不動産投資で資産形成を目指す個人投資家への7つのアドバイス|不動産投資の教科書