会社の種類には株式会社だけでなく、合同会社や合資会社などがあります。会社の種類によって、設立時に必要な費用や決算公告の有無などの特徴が細かく異なります。起業や個人事業主の法人化の際には、事業の目的や長期的な見通しなどを考慮して選ぶことが大切です。
本記事では、会社の4つの種類や法人との違い、会社形態の選び方などについて解説します。それぞれの会社形態の特徴を知り、設立に向けて準備を進めましょう。
会社の種類4つ
現在設立できる会社の種類は、主に以下の4種類です。
- 株式会社
- 合同会社
- 合資会社
- 合名会社
それぞれの特徴やメリット・デメリットについて解説します。
1. 株式会社のメリット・デメリット
株式会社は、株式を保有する株主から資金調達を行い、経営者が事業を運営して利益を株主へ配当する仕組みです。現在、最も一般的な会社の形と言えます。
将来事業や組織を拡大し、資金調達を広く行いながら会社を成長させていきたい場合に向いています。
【株式会社のメリット】
- 社会的な認知度や信用度が高い
- 上場できる
- 出資者(株主)が範囲を超えて責任を負う心配はない(株主有限責任)
- 株や社債の発行による資金調達が可能
【株式会社のデメリット】
- 決算公告が必要
- 役員の任期が決まっている
- 設立時の出費が比較的高額
- 税金の支払い義務がある(法人税の均等割)
- 株主総会や取締役会などの機関設計が必要
2. 合同会社のメリットとデメリット
合同会社とは、2006年の新会社法により新設された、出資者が役員を務める会社形態です。アメリカのLLC(Limited Liability Company)を参考にしたと言われており、日本版LLCとも呼ばれます。日本では、Apple Japanやアマゾンジャパン、Googleなどが合同会社であることが有名です。
出資した人全員が社員となり、全員が会社に対して出資した範囲で責任を負います。事業拡大を目指して出資者を増やそうとすると、組織が必然的に大きくなるため意思決定が難しくなる可能性があります。
どちらかと言うと、小規模の事業を行う場合に向いていますが、合同会社から株式会社へ変更することは可能です。
【合同会社のメリット】
- 設立費用が株式会社より安く済む
- 決算公告の義務がない
- 役員の任期がない
- 機関設定の自由度が高い
- 利益の分配は自由に設定可能
【合同会社のデメリット】
- 社会的認知度や信用度は低め
- 株式の公開はできない
- 社員の対立などにより経営に影響が及ぶ恐れがある
3. 合資会社のメリットとデメリット
合資会社は、無限責任社員と有限責任社員によって構成される持分会社の一種です。有限責任社員とは、会社の債務に対して出資額まで責任を負う立場で、無限責任社員は会社の債務に対して無制限に責任を負う立場を指します。
無限責任社員が他の出資者から資金を集めて、事業を行う場合には合資会社が適しています。無限責任社員が事業を経営し、有限責任社員は資本を提供するだけで、原則として経営には関わらないのが一般的です。
【合資会社のメリット】
- 設立時に定款認証が不要
- 自分以外の投資家を有限責任とすることで資金調達に有利になりやすい
- 利益の配分を自由に決められる
- 株式会社よりも組織運営の自由度が高い
【合資会社のデメリット】
- 無限責任社員と有限責任社員それぞれ1名以上、計2名以上が必要
- 新株発行や株式上場ができない場合がある
4. 合名会社のメリットとデメリット
合名会社とは、会社の債務に対して無制限に責任を負う無限責任社員で構成された持分会社です。無限責任社員が1名以上いれば設立が可能です。
同じ志を持つ同士が出資し合って、全員が経営者として活動します。イメージとしては、個人事業主が複数人集まって作られた会社が近いでしょう。
【合名会社のメリット】
- 出資者の全員が経営に関与する
- 設立時に定款認証が不要
- 利益の配分を自由に決められる
- 株式会社より組織運営の自由度が高い
【合名会社のデメリット】
- 全社員が会社の債務に無制限の責任を負う(無限責任社員)
- 資金調達の選択肢が株式会社よりも限られる
会社の種類一覧表
ここまで紹介してきた株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の4種類について、特徴や決まりを一覧表にまとめました。
株式会社 | 合同会社 | 合資会社 | 合名会社 | |
会社の種類 | 株式会社 | 持分会社 | ||
最低出資者数 | 1名 | 1名 | 2名 | 1名 |
出資者の略称 | 株主 | 社員 | ||
出資者の責任 | 有限責任 | 有限責任 | 有限責任と無限責任 | 無限責任 |
議決権 | 株式持分に応じた議決権割合 | 原則、社員1人1議決権 | ||
登録免許税 | 15万円〜 | 6万円〜 | ||
定款認証の要否 | 必要 | 不要 | ||
役員の任期 | 最長10年 | 無期限 | ||
決算公告の要否 | 事業年度ごとに必要 | 不要 | ||
最高意思決定機関 | 株主総会 | 社員(出資者)総会 | ||
出資の内容 | 財産出資 | 財産出資 | 財産出資、労務出資、信用出資が可能(無限責任社員の場合) | |
株式上場(IPO) | できる | できない | ||
設立費用 | 高い | 低い |
有限会社は現在設立できない
有限会社という名前を聞いたことがある人も多いでしょう。株式会社の次に多く存在すると言われる有限会社は、2006年の新会社法施行の際に新設できなくなりました。
厳密に言うと、2006年以前に設立された有限会社は、法改正後も「特例有限会社」として存続することが可能です。
会社と法人の違い
会社と法人は、同じシーンで使われることの多い単語ですが、定義や概念が異なります。まず、法人とは「法律によって人と同じ権利や義務を認められた組織」を意味します。
法人には、私法人と公法人の2種類があります。公法人は国や地方自治体などの公的な活動がめメインで、私法人は民間の事業活動を行う組織です。
私法人は、利益を得て出資者などに分配することを目的とした「営利法人」と、団体の目的達成のために利益を活用する「非営利法人」に分けられます。前述の4種類を含む「会社」は、営利法人に位置付けられています。
会社設立時に種類を選ぶポイント
会社を設立する際には、どの会社形態にするか迷う場合もあるでしょう。一般的には、株式会社が圧倒的に多く、次いで多いのが合同会社です。一方、合名会社や合資会社は、株主の責任が無限であるなどの理由により、設立ケースは少なくなっています。
株式会社と合同会社とでは、設立費用や決算公告の有無などさまざまな点で違いがあります。株式会社は一般的には知名度が高く、将来的に大規模な会社経営を見通す場合に向いているといえます。一方で、合同会社は設立費用が安く済み、社員の合意があれば自由に利益を分配できます。
その他にも、以下のようなポイントに着目することで、最適な形態が見えてくるでしょう。
- 経営に関する意思決定のしやすさ
- 資金調達方法の選択肢
- 株主総会や監査役会などを含む機関設計
- 所有と経営の分離
会社の種類を理解して自分にあった会社を設立しよう
会社の種類は4つありますが、現在は株式会社または合同会社を設立するケースが一般的です。会社を設立する際には、社会的信用度や責任の範囲、経営の自由度などそれぞれの特徴を踏まえ、最適な会社形態を選びましょう。
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