社会貢献に関する事業活動を行うNPO法人は、株式会社や合同会社とは設立申請の方法や手続きの流れが異なります。また、事業活動のジャンルや社員数などの要件が決まっており、必要書類も多いため、丁寧に準備を進めることが大切です。
本記事では、NPO法人の設立要件や立ち上げ方の手順、注意点などについて解説します。NPO法人を設立するための費用や、NPO法人のメリット・デメリットなども説明しますので、ぜひ参考にしてください。
NPO法人とは
NPO法人とは、得た利益を社員で分けることを目的とせず運営する法人のことで、「特定非営利活動法人」とも呼ばれます。NPO(Non Profit Organization/非営利組織)にはいくつかの種類があり、NPO法人は法律で定められた条件と手続きをクリアする名乗ることが可能です。
法人格を持つNPO法人は、社会的信用度が高まります。また、寄付金を得た場合には免税対象となり、事業活動にあてることが可能です。
なお、NPOと似た言葉であるNGOも、営利を目的としない社会貢献活動を行う点は同じですが、NGO(Non-governmental Organization/非政府組織)は、外務省の定義では海外の課題に取り組む活動を行う日本の団体を指し、日本国内で活動を行う団体をNPOとする傾向があります。
NPO法人設立のメリット・デメリット
NPO法人を設立することで、得られるメリットと考えられるデメリットについて見ていきましょう。まず、NPO法人を設立するメリットとして以下が挙げられます。
- 社会的な信用度が高まる
- 公的機関との事業連携に有利になる
- 補助金や助成金など資金調達面しやすい
- 税制面での優遇がある
- 株式会社よりも設立経費を抑えられる
NPO法人は、社会的な信用が高く、他の任意団体や一般社団法人などに比べて資金調達面で有利になる可能性があります。また、法人住民税の免除など、税制面の優遇を受けられる場合があります。
また、株式会社と違ってNPO法人には資本金や出資金などの決まりがなく、登録免許税も不要です。法人の財産がなくても、比較的少額で設立手続きができます。
一方で、NPO法人設立では以下のようなデメリットも考えられます。
- 設立に時間と労力がかかる
- 社員が10人以上必要である
- 活動分野に制限がある
- 独特な会計への対応が必要である
- 外部への情報公開が必要である
NPO法人の設立には審査があり、申請準備から設立までにある程度時間を要します。また、定められている設立要件を満たすために、人員を確保する必要があります。
収益事業を行う場合は、収益事業とそれ以外を分けるなど、独特なルールに沿った会計処理が必要です。
NPO法人の設立要件
NPO法人を設立するために必要な要件は主に次の2点です。
- 20の事業内容のいずれかに該当している
- 10人以上の社員が在籍している
20の事業内容のいずれかに該当している
NPO法人の活動内容は、法的に定められている20種類の事業分野のいずれかに該当する必要があります。20の事業内容は以下の通りです。
① 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
② 社会教育の推進を図る活動
③ まちづくりの推進を図る活動
④ 観光の振興を図る活動
⑤ 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
⑥ 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
⑦ 環境の保全を図る活動
⑧ 災害救援活動
⑨ 地域安全活動
⑩ 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
⑪ 国際協力の活動
⑫ 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
⑬ 子どもの健全育成を図る活動
⑭ 情報化社会の発展を図る活動
⑮ 科学技術の振興を図る活動
⑯ 経済活動の活性化を図る活動
⑰ 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
⑱ 消費者の保護を図る活動
⑲ 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
⑳ 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
設立後に活動内容の変更や追加を行うことも可能ですが、その場合は定款変更に加えて所轄庁の認証を受ける必要があります。
10人以上の社員が在籍している
NPO法人の社員が10名以上であるという条件も必須です。NPO法人における社員は、一般的な会社の社員(従業員)と違って、議決権を持つ会員を意味します。そのため、社員は平等な表決権を持って社員総会に参加することが可能です。
活動の趣旨などに賛同する人は基本的に誰でも社員になることができ、いつでも退会できる開かれた組織であることも必要です。ただ、法律では「社員に対して不当な条件を付さないこと」が定められています。
NPO法人の立ち上げ方
NPO法人を立ち上げる主な3ステップを見ていきましょう。
- 登記申請書類の作成
- 縦覧・審査・認証
- 法人設立の登記手続き
1. 登記申請書類を作成する
まずは、登記申請書類を揃えます。NPO法人の設立に必要な書類は、所轄庁の条例で定められており、すべてを揃えて提出する必要があります。所轄庁は、NPO法人の認証権および監督権を持つ行政機関であり、原則として事務所が所在する都道府県知事です。
申請には、以下のような書類が必要です。
① 定款
② 役員名簿(役員の氏名及び住所又は居所並びに各役員についての報酬の有無を記載した名簿)
③ 役員の就任承諾及び誓約書の謄本
④ 役員の住所又は居所を証する書面
⑤ 社員のうち10人以上の氏名及び住所又は居所を示した書面
⑥ 確認書
⑦ 設立趣旨書
⑧ 設立についての意思の決定を証する議事録の謄本
⑨ 設立当初の事業年度及び翌事業年度の事業計画書
⑩ 設立当初の事業年度及び翌事業年度の活動予算書
2. 縦覧・審査・認証が行われる
書類を提出した後、所轄庁にて縦覧が行われます。縦覧とは、提出された書類を市民に公開することで、縦覧は約1ヶ月間実施されます。
申請受付から3ヶ月以内に所轄庁が審査を行い、認証または不認証の結果が申請者に通知されます。認証された場合には、登記手続きを行うことで、NPO法人設立が完了します。
3. 法人の登記手続きを完了する
認証が通知されたら後、2週間以内に法務局で設立登記手続きを行います。登記が完了したら、設立登記完了届出書や登記事項証明書などを所轄庁に提出します。
主たる事務所と法務局の管轄区域が異なる場所に位置する従たる事務所についても、設立登記から2週間以内に別途登記をする必要があります。認証通知から6ヶ月以上登記手続きが行われないと、認証が取り消されてしまうことがあるので注意しましょう。
NPO法人設立に必要な費用
NPO法人の設立では、登記手続きや定款認証の手数料は一切かかりません。また、先述の通り資本金の決まりもないため、実質0円で済ませることも可能です。株式会社の設立には15万〜20万円ほどの登記費用がかかりますが、NPO法人なら費用を抑えることができます。
ただし、法人として事業を運営するにあたって、以下のような費用が発生します。
- 法人実印作成(5,000円~3万円ほど)
- 会社の印鑑証明(数百円ほど)
- 登記簿謄本の取り寄せ(数百円ほど)
- 住民票の請求(1通300円ほど)
以上を踏まえると、NPO法人の設立費用は最低でも1万〜数万円程度必要でしょう。
行政書士にNPO法人設立を依頼する費用がかかる
NPO法人の設立手続きは、自分で済ませることも可能ですが、手続きには多大な手間がかかるため、行政書士などの専門家に依頼するのが一般的です。
行政書士に依頼する場合の費用は、20万円前後が相場です。時間や労力を考えるとプロに代行してもらい、自分は事業立ち上げに注力する方が好ましいでしょう。
NPO法人設立における注意点
NPO法人設立に関する注意点について解説します。手続きを進める前に、気をつけるべきポイントを押さえておきましょう。
NPO法人設立には約3〜4ヶ月かかる
NPO法人の設立審査後に認証が通知され、法務局での登記申請が完了するまで、最低でも3ヶ月、平均で4ヶ月前後の時間がかかります。一般的な株式会社は1〜2週間で完了するため、同じ感覚で進めてしまうと、計画がずれ込む可能性があるため注意が必要です。
NPO法人の設立に向けた活動内容の明確化や、設立総会などの準備を含めて、スケジュールには余裕を持って計画的に進めましょう。
解散時に法人の残余財産は残らない
何らかの理由でNPO法人を解散する場合、法人が保有する残余財産(ざんよざいさん)は社員で分配することはできません。一般的な法人で残余財産が発生した場合は分配できることもありますが、NPO法人の残余財産は特定非営利活動法人や国、地方公共団体など定款で定められている者に帰属します。
まとめ:NPO法人設立後の経営をよく検討しよう
NPO法人の設立は、社会貢献活動を行う上で、社会的な信用を得られやすく、資金調達や税制面の優遇があるなど多くのメリットがあります。一方で、事業内容や在籍社員数などの要件、独特な税務会計といったデメリットも考えられます。
また、一般的な法人と異なり、NPO法人は設立費用を抑えられるものの、申請書類を提出してから審査、認証を受けて登記へと進むため3〜4ヶ月ほどかかります。NPO設立の目的や事業内容をよく検討し、計画的に準備することが大切です。
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