会社の経営や財務において、決算書を正しく読み取って適切な意思決定を行うことが重要です。PL(損益計算書)とBS(貸借対照表)は、決算書の重要な書類であり、情報を読み解くことで企業の収益性や財務の健全性を把握できます。
本記事では、PLとBSの基礎知識から関係性、財務分析のコツまでわかりやすく解説します。PLとBSそれぞれの見方を正しく理解して、財務管理や事業運営に役立てるためにぜひご覧ください。
PL/BSとは決算書の重要な書類
PL(損益計算書)とBS(貸借対照表)は、いずれも企業の決算書(財務諸表)において重要な書類です。簡潔にまとめると、PLは一定期間内における企業の損益を可視化した書類で、BSは特定の時点での企業の資産と負債、資本のバランスを表した書類です。
これら2つと、特定期間内のキャッシュの流れを示したキャッシュフロー計算書の3つは「財務三表」と呼ばれます。PLとBSの2つは、個人事業主を含めすべての会社で作成が義務付けられているのに対し、キャッシュフロー計算書は上場企業のみ作成義務があります。
経営で重要な5つの利益
会社の収益から費用を差し引いた残りは「利益」と言い、PLにおける利益は以下の5種類に分類されます。
- 売上総利益:売上高から売上原価を差し引いたいわゆる粗利のこと
- 営業利益:売上総利益から販売費・一般管理費を差し引いた金額
- 経常利益:営業利益と営業外収益を足したものから営業外費用を引いた金額
- 税引前当期純利益:経常利益から一時的な特別損益を調整した金額
- 当期純利益:税引前当期純利益から各種税金を差し引いた金額
PLを読み解く上で、上記利益を理解することは重要です。
PL(損益計算書)
PLとは「Profit and Loss Statement」の略で、日本語では「損益計算書」と呼ばれます。一定期間(1年間もしくは四半期)における企業の経営成績を示す財務文書です。PLでは、「収益」「費用」「利益」の3要素が用いられ、前述した5種類の利益が記載されています。
PLを見れば、企業が何に費用を使って、どれだけの売上を上げたのか、そしてどういったプロセスでどの程度の利益を出したのかを把握できます。企業の収益性を評価し、正しい経営の意思決定を行う上で重要な書類です。
PLを見る際のポイント
PLの見方はさまざまな方法がありますが、主なチェックポイントとしては以下が挙げられます。
- 当期純利益を見る:マイナスの場合は売上総利益(粗利)がプラスでも赤字である
- 営業利益率を見る:高いほど本業の収益力が高い
- 費用を見る:無駄な費用や効率の悪い支出、固定費を適切に保つ
- 前年度のPLと比較する:前年度や前々年度からの推移を確認する
PLで重要なのは、収益と費用の関係性を理解することです。売上高が増加していても、費用も増えていれば純利益は変わらないかもしれません。また、期間ごとの損益計算書を比較することで、収益性の変化や多様性、パフォーマンスの傾向を理解することにつながります。
BS(貸借対照表)
BSとは「Balance Sheet」の頭文字を取った言葉で、日本語では「貸借対照表」を表します。企業のある時点での財務状況を示す会計報告書で、企業の所有資産と負債、および株主資本のバランスを示しています。
BSを見ることで、企業が「何を持っているか」「誰への借りがどのくらいあるか」「企業自体の価値はどの程度か」といった情報がわかります。
BSは、企業の資金調達状況を表す「右(貸方)」と、調達した資金をどのように事業に使っているかを表す「左(借方)」で構成されています。右には負債と純資産が、左には資産が示され、右と左の合計値は必ず一致する仕組みです(負債+純資産=資産)。両方を対照比較して資金の状態を読み解くことが可能です。
BSを見る際のポイント
BSを見る際のポイントとしては、以下の点が挙げられます。
- 自己資本を見る:自己資本比率(純資産÷資産×100)が高いほど長期的な財務の健全性が高い
- 売掛金を見る:売上に対する売掛金の残高を見て、代金の回収を確認する必要がある
- 売上に対する棚卸資産を見る:不良在庫が多すぎないか確認する
- 過去年度と比較する:前年度や前々年度との推移や増減の大きい項目をチェックする
- 流動比率(流動資産÷流動負債×100)を見る:短期的な財務健全性を確認する
BSで資産と負債のバランスを確認することで、会社の財務状況をより深く理解し、経営戦略の策定や投資判断に役立てることが可能です。
PLとBSの関係
PLはいわば動的な財務諸表であり、BSはいわば静的な決算資料と言えます。PLとBSは異なる情報をまとめた書類ですが、密接な関係があります。例えば、PLで報告された利益(または損失)は、BSの株主資本に反映されます。また、BSの資産や負債の変化は、PLでは収益や費用に影響する場合もあります。
企業全体の財務状態を把握するためには、PLとBSの相互作用を理解することが重要です。
PLとBSを使った財務分析のやり方
PLとBSを使って企業の収益性や潜在的な成長の評価を行うためには、財務状況やパフォーマンスを適切に分析することが重要です。ここでは、PLとBSの財務分析とその活用方法について解説します。
意思決定プロセス
PLとBSには、資金調達や投資、予算、事業計画など企業経営に関するあらゆる意思決定に必要な情報が掲載されています。BSにおける現金流動性が低い場合、新事業や新しいプロジェクトへの投資を抑える、もしくは追加の資金調達を検討する必要があります。
また、PLを使って収益性や市場での機会を評価しながら、事業拡大や新分野への進出について決断を下すことは少なくありません。2つの文書を統合するアプローチにより、財務諸表ベースの意思決定とその適用方法が明確化され、スムーズな経営につながります。
リスク管理
リスク管理を行う際にも、PLとBSが有用です。具体的には、BSを見て流動比率や速動比率を算出し、短期間での負債の返済について評価することで、流動性リスクを的確に判断します。また、PLは固定費と変動費の分析に活用でき、売上が減少したときの影響を評価して準備できるでしょう。
成長機会の特定
PLを使って、異なる事業部門や地域における収益性の比較、分析を行うことが可能です。成長潜在性の高い領域を特定し、効率的な事業運営につながります。また、BSの分析により、資産の効率的な利用と収益性を評価することで、戦略的な意思決定に役立ちます。
PLとBSを正しく理解し経営に役立てよう
PLとBSは、財務諸表の中でも特に重要な文書です。両者を用いて財務分析を行うことで、企業のお金の流れや収益性、経営の健全性について正しく把握し、事業拡大や利益向上に向けた戦略を効果的に策定することにつながります。2つの財務諸表を統括的に活用するためには、日々の会計処理を正しく行い、PLとBSを正確に作成することも重要です。
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